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メカトロニクス 塗装への活用

芝浦工業大学 ドローン高所補修での活用目指す

近年、空中撮影や物資運搬などの用途で「空の産業革命」として注目されている小型の無人航空機ドローン。インフラの保守点検への活用も進められており、橋梁などの高所において、カメラ撮影や打音検査などの点検作業を行えるものがすでに実用化されている。

そのようななかで、今年2月に芝浦工業大学の伊代田岳史教授は、西武建設と共同で、業界で初めてドローンを用いて、高所など人の手が届きにくいコンクリート構造物の補修作業に必要な水や補修材を散布できる「補修ドローン」を開発。足場などの構築の手間を省き、高所でも安全かつ低コストでの補修作業を可能とするシステムになると注目を浴びている。

伊代田氏の専門はコンクリート材料、構造物の維持管理方法についての研究であるが、ドローンによる高所での点検作業システム開発にヒントを得て、補修作業にもドローンを導入した「点検・補修のドローン作業化」ができないかと考えたのが、この機体を開発するきっかけとなった。

今回製作されたドローンは、2リットルのタンクで水や補修材料を蓄えて、機体に固定された4本のノズルで散布するというもの。ノズルは、地上において散布角度や水流・水圧を調整でき、実験では1㎡あたり平均18・3秒で吹き付けができることが確認された。本機体は、既存の農薬散布ドローンに見られるような下方向のみの広い範囲ではなく、上下左右方向で狭い範囲を狙い撃ちするかたちで散布できるのが特徴となっている。なお、機体操縦と散布操作は、現時点ではすべて地上からの目視によって行われる。

新開発の補修ドローン 4本のノズルを備える

現在は一通りの実験を終えて改良に取り組んでいる状況であり、同氏によると、最大の課題は機体のペイロード(可搬重量)の限界にあるとのこと。できるかぎりの補修材料を搭載するため、電源は地上に置いて15mのケーブルで供給するかたちをとっている。将来的には性能を向上させて、より多くの材料と電源を内蔵させ、さらに自由度の高い飛行と大量の補修材散布を可能にしていく方針である。

また、ノズルも市販のものを用いているので、こちらも空中で稼働する機構にしたうえで、より精度の高いものを搭載したいとしている。

取材に対して「空中でのドローンからのノズル噴射は、一見簡単そうに見えますが、意外と難しいことが分かりました。まず、ノズル噴射時の反動に耐えて塗布面と機体との空間を一定に保つ必要があります。また、構造物の形によっては、プロペラが起こす気流との関係で、散布された補修材料が機体にもかかってしまい、故障の一因となることも分かりました。現在、これらの課題の解決に向けて研究をすすめております」と述べた。

また、巨大な橋梁などの補修に用いる際の課題として、GPSによる機体誘導ができないので、先発の点検用ドローンで発見された要補修箇所に向けて、後発の補修用ドローンを正しい位置に誘導するのは簡単ではないことも分かったという。一方で、可搬重量の問題は、塗料の剥離補修といった用途ならば少量の容量でも済むので、例えば風力発電用設備などの補修作業に使えるのではないかとして、すでに問い合わせがあるとのこと。

今後の改良にあたっては、大学という特質を生かして機械工学などの専門家とも協力をしていく方針である。

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