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塗魂、リトアニアでボランティア塗装

杉原千畝(ちうね)ハウスの前で記念撮影

ジェイエスシー(大阪府寝屋川市)の大町武司社長は、9月3日~10日の8日間、リトアニア共和国の第2の都市カウナスで実施された「杉原千畝(ちうね)ハウス改修ボランティア」に参加し、大きな成果を得て帰国した。主催は海外塗装ボランティアを積極的に推進しているTOKONインターナショナルで、同団体は塗魂(とうこん)ペインターズの海外事業を担当している。塗装ボランティアの参加者は塗魂ペインターズのメンバーが主で応援含め約70人。丸6日間作業となり、カウナスで歓迎を受けた。

大町社長は「最初8日間も会社や家を留守にするのは心配だった」と語るが、訪問が決まると「日本の誇りである杉原千畝ハウスを復旧してきたぞと胸を張って帰ってくる」覚悟で出発した。リトアニア行の直行便がないため、まず関西空港からフィンランドのヘルシンキに約10時間かけて到着。そこからプロペラ機を乗り継いだ。さらに車に4時間揺られて疲れ切って目的地に着いた。

杉原千畝は、 第二次世界大戦中リトアニアのカウナス領事館に赴任したが、ナチス・ドイツの迫害により欧州各地から逃れてきた難民たちにビザを発給し続け約6000人もの人命を救った。毎年9月にカウナスで杉原ウィークが開催されている。このイベントは、杉原千畝の偉業を記念すると共に、日本とリトアニアの人的交流が目的である。杉原ウィークでは、日本文化が紹介され、コンサート、シンポジウム、公開講座、展覧会などが開催される。塗装ボランティア活動は丁度その時期に合わせて行われた。

カウナスに到着すると滞在中の天気予報は連日雨だった。そのためビニールで建物全体を覆って、雨が降っても壁は濡れないように養生を完璧に実施。大町社長は塗装作業に必要な関連資材の調達を担当した。ホームセンターは杉原千畝ハウスから約30~40分の辺鄙なところにあり、規模は日本よりはるかに大きく2階建ての店舗が5棟並んでいた。英語が片言しか話せないため意思疎通に苦労したとのこと。

撹拌機は日本では7,000円位で買えるものが3万5,000円位と高額な値段だったため、粘って交渉してレンタルにした。柄杓は料理用の計量器で代用した。その他バケツ、延長コード、電気のプラグ、変圧器、養生テープなどを購入した。

多くの荷物をハウス運ぶためタクシーを探したが、たまに通っても無視されてしまう。気温は10℃以下で寒くて困っていると、老夫婦が乗った車が止まり「リトアニアハウス?」と声を掛けてくれた。外国なので他人の車に乗り込むのを躊躇していると、スマホで「塗魂ペインターズが紹介された内容」を見せてくれた。カウナスでは塗魂ペインターズが新聞で大きく掲載され、テレビでも流されていたようだった。善意で言ってくれているのを理解するまで少し時間がかかったが、無事にハウスにたどり着くことができた。

ボランティアの概要を聞かせてくれた大町社長

修繕工事はハウスの外壁で、面積は約500平方㍍だった。塗料はドイツ製で文化遺産を護るために使う特別なものだった。ドイツではマイスターしか使えず、リトアニアでは一度もその塗料を使った実績がない。工事が始まり現場で写真を撮っているとドイツの設計士が「遊びに来たのだったら帰ってくれ」と厳しく注意された。しかしその言葉で参加者全員の大和魂に火が付いた。「中途半端でダメでしたでは日本に帰れない。何が何でも成功させよう」と細かい打ち合わせをし、「どんなに疲れてもやり抜こう」と一致団結した。

壁はアルカリ性が強いため、酸を塗って中和した状態で素早く施工しなければいけない。塗料はガラスを溶かしたような液体と砥の粉のような粉に水を混ぜて使うが、少しでも比率を間違えると失敗してしまう。しかもしっかり撹拌しなければいけない。30分ほど熟成時間を置き、使う前にもう一度撹拌してから塗る。

リシンのような粘度の高い材料なのでローラーは使えない。刷毛ではボロボロになってしまう。そこで2つのラスターの柄をガムテープでしっかり固定し、材料をたくさん含ませて刷り込むよう工夫した。塗り出したら手を止められない大変な作業であった。

最終日、ドイツ人の設計士は仕上がりを見て一言「グレイト!」と出来栄えを評価してくれた。「思わず涙がこぼれた。いろいろなことがあったが、バッチリ仕上げて全員で楽しい思い出を作ることができた」と大町社長はその時の感動を振り返る。

塗魂ペインターズのメンバーはどこに行っても「トーコン」と声を掛けられ、一緒に写真撮影してまるでアイドルになったような気分だったという。屋根工事の費用はクラウドファンディングで募金し、集まったお金は現地の業者に寄付し、感謝された。