◎木材塗装関連のQ&A

 日常、直面する問題点や課題をQ&A形式でまとめました。ほんの一部ですが、皆様のご参考になれば幸いです。なお、他にご質問があれば、当研究会が主催する木工塗装入門講座、木材塗装ゼミナールの場でお答えしております。

  1. 素材関連
  2. 塗料関連
  3. 木材の着色関連
  4. 塗装工程関連
  5. 塗装方法、塗装・乾燥機器関連
  6. 塗料・塗膜の品質評価試験関連
  7. 塗装・塗膜の欠陥
  8. VOC・室内環境・安全衛生関連

≪1≫素材関連

質問1 "木材の活用は地球環境保全にマイナスである"との意見がありますが、一方、環境にやさしいとも言われます。正しい見解を教えてください。
答え:樹木は光合成によって大気中の二酸化炭素を貯蔵し酸素を供給してくれますが、長期間そのままにしておくと枯れてしまい、貯蔵した二酸化炭素が大気中に戻ってしまいます。そのため、植林した樹木はある年齢になったら伐採して木材として利用し、その後にさらに植林することで森林を持続的に利用することができます。伐採した木材は、住宅や家具などとして長期間利用することで、二酸化炭素を貯蔵することになるので、木材を活用することは地球温暖化防止に大きく貢献しています。
質問2 "木材に塗装すると呼吸が阻害されて木が死んでしまう"と言うのは本当ですか?
答え:木材は伐採後、製材、乾燥された工業用材料ですので生命体ではありません。木材の呼吸というのは、温度、湿度の変化によって木材が水分を吸湿したりすることを文学的に表現した言い方で、生命体の呼吸とは違います。木材を塗装すると吸放湿性は低下しますが、塗膜自体の吸湿性や透湿性のため、塗装した木材もある程度の吸放湿性を持っていますし、塗装した家具を見てわかるように、塗装によりいつまでも木材の美しさを保つことができます。屋外における塗装した木材の塗膜割れは、木材の呼吸作用を止めたからではなく、紫外線などによる木材及び塗膜自体の劣化によるものです。木材の含水率が高いと良好な塗装ができませんので、塗装前に木材を使用する環境の平衡含水率(一定の温度、湿度の条件の中に長時間放置すると最終的に安定する含水率)近くまで乾燥することが重要です。

≪2≫塗料関連

質問1 水性塗料は有機溶剤塗料と比べて塗装後の研磨可能までの乾燥時間が長くなる傾向がありますが、最近の塗装の温度条件と乾燥時間はどのくらいでしょうか。
答え:乾燥時間は塗料樹脂の種類や条件によって大きく異なるため単純に最短条件と時間を回答するのは難しいところがあります。一昔前までの水性クリア塗料は、乾燥性及び研磨性において溶剤型クリア塗料に比べて劣っていたことは事実です。従って、塗装環境に良いものの使い勝手が悪いという評価が先だって、需要が伸びませんでした。その後、水性樹脂の改良が進み、最近の建築塗装現場で使用されているのは、むしろ溶剤型クリア塗料より作業性の優れたものが商品化され、需要も増加傾向があります。耐久性などの物性面では、溶剤型ウレタン塗料よりまだ劣っています。具体的な乾燥性は、気温25℃相対湿度60%の条件で1回塗りであれば、半造膜タイプで0・5〜1時間(40〜60g/m2)造膜タイプで1〜2時間(60〜80g/m2)くらいで研磨可能です。水性塗料は温度と湿度の関係が大きく関係します。温度が高く、湿度が低く、かつ、空気の流れが速いと乾燥が早くなります。このことは、衣類の洗濯物の乾燥の際の条件と似ています。
質問2 シンナーは揮発して塗膜として残らないので、「メーカー指定品を使うのはもったいない。安い物で良い」と言われました。これについての見解を伺います。
答え:シンナーはウレタン用、ポリエステル用、ラッカー用等色々な種類があり、それぞれの樹脂に適した有機溶剤が使われます。これらは、塗料樹脂の溶解力や塗膜形成時に欠陥が発生しないように乾燥速度を調整しています。塗料メーカーは、塗料の設計に合わせたシンナーの開発をしています。特に気を付けて頂きたい点は、ウレタン塗料にはウレタン専用シンナーを使用し、ラッカーシンナーは絶対使ってはいけないということです。これは、ラッカーシンナー中のアルコール系溶剤によってウレタン樹脂の硬化反応が阻害されます。シンナーは要求する塗膜性能を満足させ、また、塗装時の欠陥を防止するために重要な役割を持っているため、メーカー指定品を使用して頂く必要があります。

≪3≫木材の着色関連

質問1 生地(木地)着色する場合、素材により吸い込みムラが発生してしまいますが、ムラを少なくする着色方法を教えてください。
答え:生地(木地)着色の基本的な方法として、まず素地(木地・生地ともいう)調整をしっかりとすることです。つまり、サンドペーパーの当て方は正しいか、番手の種類(一般的には最終番手180〜240)は適合しているか、逆目の処理は出来ているか等を確認することです。次に、各種着色剤を使用した際の色ムラ防止策として、
a)水性ステインを刷毛塗りする場合は、着色する直前に一度素地を水で濡らしておくことが有効です。また、スプレー塗装の場合であれば、濃度を少し薄めにしておいて何度かに分けてスプレー吹付け着色をすることで対応します。
b)目止着色(ワイピングステイン)の場合は、着色の前処理として、捨て塗り(ウォッシュコートと称する工程)をすることが最も有効な手段であり、特に広葉樹の環孔材(ケヤキ・ナラ・タモ等)は道管(木目)が鮮明に濃く着色され美しい仕上がりとなります。また、捨て塗りをしない場合は、一度に濃色な目止着色をすると色ムラになりやすいので、ダブルステイン塗装をすることです。これは、目止着色剤の濃度を少し薄くしておき、その薄くした分を補うための前工程として、素地着色剤で補色着色をしておく方法です。その際の条件として、素地着色剤は目止着色剤に溶解しないタイプを選定することが必要です。例として、水性かアルコール系の着色剤で素地着色しておき、乾燥後に溶剤系目止着色剤で目止着色をします。最後に、広葉樹の散孔材(カバ・ブナ・シナ等)は、上述の色ムラ防止対策をしたとしても、色ムラが発生しやすい樹種です。それは、素地の木材組織上の特性で、吸い込みムラが出やすい構造であるということを十分に理解しておく必要があります。これらの樹種の濃色着色仕上げに対応するには、素地着色のみに比重を置くことを避けなければ解決しません。つまり、着色工程をその塗装工程の中で何回かに分ける方法をとることです。具体的には、素地着色は色ムラが出ない程度の濃度で着色しておき、あとは塗膜着色(シーラーステイン、カラークリヤー、カラーフラット等)する方法です。均一で美しい着色塗装をするには、刷毛塗りでは無理があるので、スプレー吹付けが条件となります。

≪4≫塗装工程関連

質問1 "塗りは木地なり""木地研磨に勝る仕上げなし"との格言がありますが、具体的に、どのようなことを言う内容でしょうか。
答え:木地研磨とは、被塗物である木地表面を研磨して塗装仕上げをきれいにする工程です。その目的は@接着剤の付着や擦り傷、打痕、手垢等を除去する、A表面の凸凹をなくし平らな面にする、B材種とその着色剤に合った表面粗さ(#180〜#240)にすることです。作業場の注意点は、木材の硬さに応じた最終研磨番手の選択、と木理の方向に研磨することにより、鮮映で均一な着色が出来ます。このように、前工程である木地研磨で最終塗装仕上げの良し悪しが決まります。
質問2 塗装工程は、"塗ること、乾かすこと、研磨すること"の繰り返しで成り立っていると言われていますが、その中の"塗る"ポイントを教えて下さい。
答え:塗り工程は、捨て塗り、下塗り、中塗り、上塗り分類されます。それぞれの工程で塗る目的が異なってきます。塗料は、ウッドシーラー、サンディングシーラー、艶有りクリア、艶消しクリアなどの用途に応じた塗料樹脂が選択されます。塗りの共通ポイントの第1は、決められた厚さに塗ること、第2は均一に塗ること、第3は塗料樹脂に合った粘度に調整すること、第4は塗装する場所の温度、湿度、風速などの空調管理をしっかりすること、です。塗り工程の作業時間は短時間ですが、この塗りの仕上りは、後工程に大きく影響しますので、スプレー吹きムラ、オレンジピール、はじき等の欠陥を絶対出さないようにしましょう。

≪5≫塗装方法、塗装・乾燥機器関連

質問1 エアースプレーの塗着効率は数十パーセントと非常に低い値です。塗料費のコストダウンやVOC削減をしたいと思います。最善の塗装方法を教えてください。
答え:スプレーの方法は、エアースプレー、エアレススプレー、静電方式がありますが、最も塗着効率の良い方式は静電方式です。静電塗装は、エアー霧化方式や回転ベルによる遠心力霧化方式があります。静電塗装条件(電圧、回転数、送り速度)や塗料条件(塗料粘度、溶剤選択)被塗物の配置、塗装する順序など、細部に亘る塗装条件設定がポイントとなります。塗料の見地からは、ノンソルべント(無溶剤)やハイソリッド(高樹脂不揮発成分)の塗料を使うことで、塗着効率がアップしてコスト削減につながり、また、揮発溶剤が減少することによって環境にやさしい塗装になります。
質問2 塗料の乾燥方法の種類と特徴を教えて下さい。
答え:塗料の乾燥硬化方法は、大別すると揮発乾燥形と硬化乾燥形に分類されます。揮発形は、出来るだけ早く溶剤を揮発させることがポイントで、その条件は、乾燥温度を上げ、表面風速を出来るだけ速くすることです。一般的な木工塗装の一工程(ドライ膜厚30μmとして)の乾燥条件は、40〜50℃で60分以内が欠陥を発生させない最適条件です。一般的な硬化反応形の場合は、温度を出来るだけ上げることで、化学反応が促進しますが、木材塗装では限界があります。現在のところ電子線硬化が最速ですが、実用的な乾燥方式は、紫外線(UV)硬化方式でその硬化時間は数秒単位です。塗料は、透明塗料が最も適していますが、不透明なエナメルでもランプの選択などの硬化条件を詰めれば、数十μmの薄膜ならば可能です。

≪6≫塗料・塗膜の品質評価試験関連

質問1 木工製品の塗膜品質試験の規格を教えてください。
答え:国内外に様々な国家規格や団体規格、業界規格があります。我が国ではJIS(日本工業規格)やJAS(日本農林規格)が良く使われています。木工製品に限定はしていませんが、塗料・塗膜に関する標準的な試験方法を規定したものとしてJIS K 5600(1999)があります。試験の目的を明確にして合理的に使い分けると良いでしょう。
質問2 塗料の価格と品質性能の関係があれば教えてください。
答え:一般に高性能で特殊な塗料は価格も高い傾向がありますが、品質性能と価格に明確な相関性はありません。どんなに高価で高性能な塗料を使っても、含水率の高い木材に塗装すれば剥離や割れの原因になります。特に、木材の場合、使われる場所が屋内と屋外では塗料の選択がとても大切です。被塗物が使われる環境や要求される品質性能に応じた塗料の選択と、使う塗料の正しい仕様に合わせた塗装管理に努めましょう。
質問3 屋外利用される塗装木材の耐久性を調べる方法を教えてください。
答え:実際に使用される環境を想定して、その環境に近い屋外に直接試験品を設置して様子を観察する自然(屋外)暴露試験と太陽光と雨の影響因子を人工的に作り出し試験品に与える促進耐候試験があります。前者は特殊な試験機を必要とせず信頼性の高いデータが得やすいというメリットがありますが、想定した耐久年数と同等以上の試験年月がかかるというデメリットがあります。一方後者は、設定可能な人工光源の高いエネルギーと水スプレーの頻繁なサイクルで試験時間を大幅に短縮できるメリットがある反面、自然界では有り得ない劣化現象や速度により実際の耐久性を評価しにくいデメリットがあります。木材の場合、塗装仕様は同じでも試験片によるデータと実際の製品では予測した性能に大きな差が出ることもあります。特に、現場塗装では施行上管理しにくい要因が絡み期待した耐久性が発揮されないこともあります。屋外利用木材の耐久性向上には塗装仕様だけでなく、水はけの工夫など設計上の配慮や定期的なメンテナンスの習慣などにも配慮することが大切です。

≪7≫塗装・塗膜の欠陥

質問1 梅雨時にラッカー塗料を塗装すると"かぶり(表面が白くに濁った状態)"になります。この原因と対策を教えて下さい。
答え:ラッカー塗料は揮発乾燥形でシンナーが揮発して塗膜になる塗料です。かぶり(白化またはブラッシング)は溶剤が揮発する時に、表面が冷やされ、空気中の水分が結露して塗料樹脂が不溶化する現象で、高温多湿時に発生します。この対策は、シンナーの乾燥速度を遅らせるリターダーシンナー(主に高沸点溶剤)を少量配合する方法が一般的です。その他、塗装する場所や乾燥する場所の湿度を下げ、風の流れを遅くすること、さらに、被塗物を少し加温する方法などがあります。
質問2 収納家具やダイニングテーブルで塗装された初期や日数経過したものに、塗膜が白く濁ることがあります。この原因とその対策を教えてください。
答え:これは、ラッカーやウレタンのサンディングシーラータイプの塗料の研磨剤と樹脂の界面解離によって白く濁って見えるためで、主に水分の影響を受けて発生します。この対策は、サンディングシーラーの研磨剤(ステアリン酸亜鉛)の添加量をできるだけ減らすこと、研磨剤と樹脂との相溶性改善(分散剤)などが塗料メーカーにとって重要な対策です。さらに、素材の含水率管理をすること、水性着色の乾燥を十分取ること、塗装の場所の湿度を下げ、一度に厚塗りしないこと、インターバルや塗膜の乾燥を十分取ること、サンディングシーラーの塗膜を必要以上に厚くしないこと、などが考えられます。

≪8≫VOC・室内環境・安全衛生関連

質問1 家具に使用する材料のVOC対策について教えて下さい。
答え:家具の材料としてF☆☆☆☆等級の材料(木質建材、接着剤、塗料)を使用することが重要です。現在、国内ではF☆☆☆☆の木質建材の使用、流通が主流になっています。一般的にF☆☆☆☆建材とホルムアルデヒド発散の多い材料が混在すると管理が難しくなるため、注意が必要です。また、材料調達時や生産・製造委託など商品調達時に使用資材の指定や試験成績書等の確認を行うことも必要です。
質問2 家具から放散されるVOCの規制について教えて下さい。
答え:一般家庭の家具については、建築基準法にあるような使用面積の制限などを法律で定めた規制はありません。家具業界の団体で定めたF☆☆☆、F☆☆☆☆の材料を使用している家具に室内環境配慮マークが添付されていますが、自主基準であるため、家具メーカーの判断に委ねられているのが現状です。
質問3 家具から放散されるVOC放散量の測定方法を教えて下さい。
答え:家具に使用されている木質ボード、塗料などから放散されるVOCの測定方法は、JIS A 1460のデシケ−タ法、JIS A 1901の小型チャンバー法で測定します。家具の測定方法は、JIS A 1911の大型チャンバー法がありますが、家具はサイズが大きいため、試験設備、試験費用の負担が大きいので、製品自体の検査を定期的に実施しているメーカーはありません。大型チャンバーの容積は1m3〜80m3までと定義されています。

(C)木材塗装研究会

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