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2016 業界5大ニュース<テクノロジー編>

3位 新国立競技場に遮熱塗料採用の可能性高まる

新国立競技場、金属屋根部分に「日射反射率の高い屋根塗装による熱負荷の低減」を提案。遮熱塗料採用の可能性が高まる。

紆余曲折を経て隈研吾氏・大成建設・梓設計のチームのA案に決まった新国立競技場。そのデザインによると金属屋根部分に「日射反射率の高い屋根塗装による熱負荷の軽減」が提案されており、遮熱塗料の採用の可能性が強まっている。
A案が実現を目指すのは環境共生型スタジアム。夏場対策も兼ねた温度の上昇抑制策では緑地や水面、保水性舗装などで屋外の歩行者を快適にするとともに、屋根への遮熱塗装により屋根面の表面温度を下げ、観客や競技者が過ごしやすくする。

温熱シミュレーションでは1階の平均温度が何も対策を講じない場合の58・7℃に比べ、43・1℃と15・6℃も下がり、大幅な温熱環境の改善を見込んでいるものだ。その一方、道路の舗装に遮熱塗料を塗る遮熱舗装も東京五輪の夏場対策として有力視されている。実際に遮熱舗装の施工が進行中だ。東京都はオリンピックのマラソンコース(仮)の遮熱舗装工事を急ぎ進めている。

都は20年度から港区汐留や新宿区などのヒートアイランドが特に厳しいヒートアイランド対策推進エリアでの施工を推進中。その延長線上で、昨年12月の都の長期ビジョンによってマラソンコースを含む都道への遮熱性舗装及び保水性舗装を、2020年までに累計で136㎞にまで増やす方針を打ち出した。あと52㎞伸ばす。

マラソンコースは往復コースで片道約21㎞のうち半分が都道。そのまた半分がすでに遮熱性なり保水性で舗装済み。残りを五輪までに仕上げる構えだ。コースのうち半分は国道や一部が区道だが、国も「アスリート・観客にやさしい道の検討会」で遮熱性舗装の採用を検討中だ。

昨年の7月にはテスト施工を実施。東京港区青山5丁目交差点から青山学院前交差点間の車道約500mを4区分し、遮熱性装、保水性、排水性舗装、密粒舗装(一般的な舗装)の4舗装を7テスト施工したもの。現地で効果を比較検証し、急ぎ採用舗装を決めるという。
 新国立への遮熱塗装もコースへの遮熱舗装も、五輪の場で観客や観光客に遮熱の威力を体感してもらえれば、国内外への絶好のPRになる。

『塗料報知』2016年4月17日号1面(No.4137)

4位 工業塗装、非伝導物への静電塗装が可能に

名古屋市工業研究所、中部塗装技術研究会、愛知県工業塗装協同組合共催の明日の工業塗装を考える懇談会は、11月10日、名古屋市熱田区六番の名古屋市工業研究所で「樹脂も金属も革新静電塗装、その効果と原理」のテーマで、アースクリーンテクノ塗装改善研究室室長の田村吉宣氏が講演した。

静電塗装技術が開発され75年の歴史を有するが、この革新静電塗装は、従来静電塗装には不可能であった非導電物への静電塗装を可能にしたもので、トラックキャブの外装樹脂に採用され、スプレー時間50%減、塗料使用量35%減という効果を得ている。 

さらにこの新技術が導電物,非導電物を問わず従来、静電塗装では難しいとされていた狭隘部への入り込み性にも優れ、複雑な凹凸を有する導電被塗物への実用化が始まっている。この入り込み性が優れている理由は、コロナ放電極がないため被塗物との間に強い電界を形成しないからである。

本技術は、トラック外装部品のような1コート、1ベーク塗装の実用化を進めてきているが、自動車PPバンパー塗装にみられる複層塗装についても適用できることを確認している。さらに、この技術を用いた静電ハンドガンを一般工業塗装業でトライしてもらったところ、技能者の養成に苦心している塗装経営者が待ち望んでいたものであった。また本技術が、なお進展するには「抵抗塗料」の開発が待たれると結んだ。

『塗料報知』2016年12月7日号1面(No.4160)

5位 工業塗装分野、生産効率向上にIoT導入へ

自動認識技術デジタルマークで被塗物をリアルタイム管理。ラベルによる生産管理システムで生産効率向上に。

小泉塗装工業所(埼玉)は、長年にわたり、主に自動車部品のカチオン電着塗装を手がけているが、現在、画期的な「ラベルによる生産管理システム」の導入が進められている。新システムは、塗装ライン上の千本以上のハンガー全てに個別のラベルを貼りつけることで被塗物の管理を行うもの。現時点の構想では、①工場への搬入確認、②ハンガーへの吊り掛け数入力、③ライン投入、④不良品数入力、⑤検品数入力といった各作業が、ラベルをハンディ端末で読み取ることで簡便に行われる。

加えて、新システムの一環として、顧客からの受注受付もWeb画面から行うことで受注~搬入~作業~納品の流れがデータベースに集約され、随時の進捗情報の提供を可能とする。新システムを実現可能としたのが、従来のバーコードと組み合わせる、サトー(東京)提供の自動認識技術「デジタルマーク」である。これは多数のモジュールを組み込んだ新しい自動認識シンボルであり、欠損や汚れ、ゆがみに強く耐環境性が高い。その特性から、塗料や薬品、乾燥炉の高温に曝されてもデータ読取が可能で、塗装ラインでの使用にも耐えられる。

なお、同工業所では、将来は新システムを発展させ、取扱う100種もの被塗物ごとに「最適の吊り掛け方法」、「検品時の注意点」などを随時ハンディ端末に表示して「品質向上」にも役立てることを意図。あわせて、データベースに集積した各種データを活用する「継続的な業務改善」へ進化させたいと構想し、すでに社員からも多くのアイデアが出されている。

社員の「アイデア出し」を支えるのは、同工業所の「改善提案制度」で、口頭での提案でもよく、提案に見合った報酬も与える仕組みとすることで、やりがいを高めている。新システムの本格稼働は、今年9月に開始される。管理部システム課の小泉雄一氏は「新しいものを導入するにあたっては、現場のモチベーションを高める仕組みを作って?人の気持ちを温めること〟が成功のカギだと考えます。また、作業データ活用で、IoT時代にふさわしい?考える塗装ライン〟が日本の中小企業から生まれて広がることを願って、すでに某メーカーからの研修者も迎えております」と語る。

『塗料報知』2016年9月7日号3面(No.4151)

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