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水系パール塗料の耐候性向上新型配合品/台湾エバーライトケミカル

水系パール塗料に応用する耐候性と耐熱性の最新技術研究

楊永吉賴尹婷呂忠韓蔡尚樺謝杰修簡智嫻黃耀興博士【台湾エバーライトケミカル】

パール塗料は、下塗りにクリアコートを塗装すると、耐候性や耐熱性が劣化やすいことが課題となっている。台湾エバーライトケミカルが開発したEversorb® AQシリーズは、水系クリアコートおよび色付け塗料向けに開発された水系配合品であり、自動車塗料、工業用塗料、および機能性塗料に最適なソリューションを提供する。一方、Eversorb® HEシリーズは、合成物や製品の耐熱性および保管安定性に対して有効なソリューションを提供する。

キーワード

パール塗料、光安定剤、水系光安定剤、実験デザイン(DOE)、耐候性、耐熱性、応答曲面法(RSM)

『塗布と塗膜』2024年8月号 特集:機械化・自動化ソリューションによる人手不足緩和と生産性向上

1.はじめに

パール塗料は、天然のマイカに酸化チタン(TiO2)や他の高屈折率の金属酸化物をコーティングしている。光が塗料に入射すると、多重の屈折、反射、吸収、通り抜け、干渉が起こり、美しいパールのような色彩が生じる。図1は、塗料システム内で可視光と異なるタイプの顔料の粒子光学相互作用の効果を示している1)。白いパール塗料の塗装がボコボコの外観に対し品質向上に関する研究では、長波長、短波長、DOIデータ以外、B値やWaWbWcWdWeを導入することが指摘されている2)

一般的に、B値が0に近いほど表面の視覚効果が良くなる。B値が±5の範囲内で、またWd値が20以下であることが、最適な視覚範囲とされている。パール塗料は一層だけではなく、通常、二層構造または三層構造で使用される。二層パール塗装はパール塗料とクリアコートの二層からなる。三層パール塗装は下塗り、パール塗料、クリアコートの三層構造である。高温条件下での二層パール塗装の乾燥遅乾剤添加量が一般的に4.0%で、車体の塗膜品質を確保し、生産要件を満たすことが示されている3

一方、三層パール塗装の調整プロセスでは、下塗りとパール塗料の間の相互作用が考慮されていないため、乾燥遅乾剤の過剰添加が車体の色調に影響を与えることがある。そのため、研究員は現場での経験を積み重ね、三層パール塗装の色差などの塗膜特性に対する影響要因を正確に把握し、迅速かつ適切に判断する必要がある。また、別の研究で4,パール塗料は消費者によく受け入れられているが、パール塗料の耐候性と耐熱性が一般の塗料に比べて劣るという欠点がある。耐候性を向上させるために、現在の工業業界では、一般的に紫外線吸収剤(UVA)と光安定剤(HALS)を添加する。  当社が開発した Eversorb® AQ 水系光安定剤シリーズは 5-9 、高分子材料を紫外線から守り、塗料の色褪せ、チョーキングなどの劣化現象を減らす。

図1 塗料システム内で可視光と異なるタイプの顔料の粒子光学相互作用の効果

 

2.実験

2.1実験原料

  • 水系パール塗料,工業レベル,台灣奕美塗料。
    水系ポリウレタン, 工業レベル,台灣立大股份有限公司。
    NHS(New High Performance Stabilizer)新型耐UV/耐熱剤,工業レベル,当社。



2.2実験設備

黄変試験設備:ブランドQ Panel/品番:QUV/Basic
測色計:ブランドMINOLTA/品番:CM-3500d
オーブン: ブランド:DENG YNG/品番:DO45

2.3実験方法

・クリアコートをガラスにスプレーする。
・水系白い下塗りをスプレーし乾燥してから、水系パール塗料を塗布し60度で5-8 minsを乾燥する。
・異なるタイプの光安定剤を測り、水系クリアコートとミックスし30分の程度で混ぜて、水系パール塗料のテストピースにスプレーする。

2.4試験方法

2.4.1 オーブン試験

テストピースをオーブンに置いて120 90時間を設定する。

2.4.2 人工加速老化試験

ASTM G154-2  313nmフル照射、0.71 W/m2、測色計で加速老化試験過程の変化を観察する。

2.4.3 色差試験

測色計:ブランドMINOLTA/品番:CM-3500d

2.4.4 ソフトウェアの使用と分析

ソフトウェア:JMP内装の分析ツール

3.結果と討論

3.1 水系クリアコートをガラスとパール下塗りでの耐候試験-テストピースの比較

水系クリアコートをガラスとパール塗料に塗布し、313 nm 300時間の耐候性試験結果は図2に示されている。試験結果、ガラスに塗布した水系クリアコートの黄変値ΔY5.45になって、同じ水系クリアコートをパール塗料に塗布した場合、黄変値は大幅に上昇し、14.7(ΔY=19.2-4.5)になった。これは、パール塗料は水系クリアコートに対して紫外線の反射、屈折、および干渉により重大な劣化を引き起こす可能性があることを示している。一方、図3は当社新型耐UV/耐熱剤(NHS)を添加したパール塗料に対するクリアコートの耐候性試験(313nm、300時間後)の写真である。1%のNHSを添加すると、クリアコートがパール塗料に対する耐候性を顕著に向上させることが観察される。

3.2 水系クリアコートをガラスとパール下塗りでの耐熱試験-テストピースの比較

水系クリアコートをガラスとパール塗料に塗布し、120 90時間の耐熱試験結果は図4に示されている。試験結果、ガラスに塗布した水系クリアコートの黄変値ΔY2.42になって、同じ水系クリアコートをパール塗料に塗布した場合、黄変値は大幅に上昇し、20.2(ΔY=22.5-2.3)になった。これは、パール塗料が水系クリアコートに対して熱伝導、対流、および放射により重大な劣化を引き起こす可能性があることを示している。

一方、図5は当社新型耐UV/耐熱剤(NHS)を添加した時のクリアコートがパール塗料に対し耐候試験の写真である。1%のNHSを添加すると、クリアコートがパール塗料に対する耐候性を顕著に向上させることが観察される。

3.3 耐候実験設計DOE, (Design of experiment) から試験のパラメータを設計と結果の分析

新型耐UV /耐熱剤(NHS)が水系クリアコートに添加された場合、パール塗料の保護に対する耐候性と耐熱性について、異なる濃度と膜厚で実験が行われた。実験計画は上記表2に示されている。

表2 最適化実験結果の検討



また、方程式(一)を用いて、新型耐UV/耐熱剤(NHS)の濃度を調整することで、パール塗料の劣化や黄変を軽減する計算ができる。

 【方程式()】
Y(パール塗料に対しクリアコートが黄変値を減少) 10.8-7.98×[NHS%]-0.04[DFT] ± 0.028

3.4 応答曲面法(Response Surface Methodology) (RSM) から新型耐UV/耐熱剤(NHS)と膜厚の耐熱分析

データ表2を使用してさらに反応曲面図6を示すと、X軸は新型耐UV/耐熱剤(NHS)(%)、Z軸は膜厚(μm)、Y軸は水系パール塗料の耐熱性(ΔY)の黄変変化を表す。赤色の部分は水系パール塗料の耐熱性を減らす最適の答えを示している。

図6 反応曲面図 (NHS vs. DFT vs. ΔE)

 

まとめ

以上のように、結論は下記の4点になる。

(1)水系クリアコートをガラスおよびパール塗料に塗布し、313 nm 300時間の耐候試験を行った結果、ガラス上の水系クリアコートの黄変値ΔY5.45になり。一方、同じ水系クリアコートをパール下塗りに塗布した場合、黄変値は14.7(ΔY=19.2-4.5)に大幅に上昇し、パール下塗りが水系クリアコートに紫外線の反射、屈折、干渉による深刻なダメージを与える可能性が示された。一方、当社新型耐UV/耐熱剤(NHS)を1%添加した場合、黄変値ΔYが2.1まで、大幅に減少させることが示された。

(2)水系クリアコートをガラスおよびパール下塗りに塗布し、12090時間の耐熱試験を行った結果、ガラス上の水系クリアコートの黄変値ΔY2.42になり。一方、同じ水系クリアコートをパール下塗りに塗布した場合、黄変値は20.2(ΔY=22.5-2.3)に大幅に上昇し、パール下塗りが水系クリアコートに熱伝導、対流、放射による深刻なダメージを与える可能性が示された。一方、当社新型耐UV/耐熱剤(NHS)を1%添加した場合、黄変値ΔYが3.25まで、大幅に減少させることが示された。

(3)方程式(一)により、最適な耐候性黄変値は以下のように求められる: △Y(クリアコートがパール塗料に対する耐候性の黄変値) = 10.8-7.98×[NHS%]-0.04[DFT] ± 0.028

(4)応答曲面法(Response Surface MethodologyRSM)を用いて、新型耐UV/耐熱剤(NHS)と膜厚の耐候性影響を分析した結果、図4の赤色の部分は水系パール塗料の耐候性および耐熱性の最適解を示している。

【参考文献】

  1. 1)Gerhard Pfaff. The world of inorganic pigments [J]., ChemTexts, 2022 8:15.
  2. 2)孫穎,華俊,張燦生,張正兵. 珠光白面漆橘皮外觀品質的改善[J]. 現代塗料與塗裝, 2021, (2): 28-30
  3. 3)楊學岩,單國華. 三塗層珠光漆的工藝調試及色差控制[J]. 現代塗料與塗裝, 2015, (1): 1-4
  4. 4)邱學科,朱德勇.水性聚氨酯金屬閃光漆在大型交通工具中的應用研究[J].上海塗料,2014,52(8): 4-7

5)楊永吉, 黃世承, 簡智嫻, 黃耀興. 高性能水性複配型光穩定劑應用於南方松表面處理[J]. 塗料工業, 2021, 41(9): 5-9

  1. 6)楊永吉, 黃世承, 宋宇書, 邱曉芳, 黃耀興. 新型光穩定劑應用於水性環氧塗料的研究[J]. 塗料工業, 2012,42(8): 43-46
  2. 7)YUNG-CHI YANG, LAI MING-HUA, SUNG YU-SHU, LAI YIN-TING, CHIOU SHIAN-FANG, CHEIN CHIN-HSIEN, 8)YAO-HSING HUANG. Novel light stabilizers for waterborne alkyd coatings [J]. Poly-mers Paint Colour Journal, 2014, 204(4569): 20-24
  3. 9)YANG YUNG-CHI, SUNG YU-SHU, CHEIN CHIN-HSIEN, HUANG YAO-HSING. Light stabilizers for environmental friendly coatings [J]. Polymers Paint Colour Journal, 2012, 202(4571): 16-18
  4. YANG YUNG-CHI, STEVEN LEE, HUANG YAO-HSING. Light stabilizers make the UV protection of environmental friendly coatings easier [J]. Coatings World, 2012, 17(4): 83-85

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著者:楊永吉(Yung-Chi, Yang

台湾エバーライトケミカル  特用化學研究所  技術副處長
2003年台湾エバーライトケミカル 入社、水性塗料及び機能性塗料の開発に従事し現在に至る。
台湾塗料公協會會員。

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