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【万博】縁の下の力持ち役果たす

2025.06.17

観光経済新聞、東京交通新聞、塗料報知、農村ニュース、ハウジング・トリビューンの専門5紙誌は2025年度の連携企画第1弾として、4月13日に開幕した「大阪・関西万博」をテーマに取り上げた。各紙誌が見た万博、各業界の万博関連の動きをリポートする。

パビリオンの保護・美装に貢献

大阪ガスケミカルの木材保護塗料が内外部に採用


万博の主役と言える各パビリオン。塗料・塗装は縁の下の力持ち的な役割を果たしている。木材保護塗料を手がけている大阪ガスケミカルは、大阪府・市などが出展するパビリオン「大阪ヘルスケアパビリオン」の木部内外壁用の塗料を物品協賛した。
 
建物全体に大阪府産材のヒノキが採用される同パビリオンでは、木部外壁は紫外線や風雨による劣化、内壁は人やモノの接触により美観が損なわれることが想定された。同社の木材保護塗料を施工することで、木の風合いを損ねず、木目や木肌の美しさを際立たせ、木本来の魅力を引き出しながら耐久性を向上させることで、パビリオンの外装材保護・美観維持に貢献している。
 
外観の赤い球体が印象的なシンガポールパビリオン「ドリーム・スフィア(夢の球体)」。想像性、持続可能性、体験型を融合させたという同パビリオンの外観は、シンガポールの愛称である「リトル・レッド・ドット(Little Red Dot)」を表現したデザインで、リサイクル素材で作られた何千枚もの「ドリーム・ディスク」が重なり合っている。このディスク表面には日本ペイントが塗料を提供した。作業性や隠ぺい性に優れた仕上がり性の高い塗料で、外壁・鉄部・木部と幅広い素材適性を有し、ディスクの素材であるアルミにも適応している。
 
同社では、海外グループ会社と協力して、シンガポール政府観光局やパビリオンの設計・デザインチームと連携して事業を進めた。ディスカッションを重ねることで、デザイナーがイメージする色を表現できたという。
 
日本館、迎賓館、海外パビリオン(カタール、モナコ)、プロデューサーテーマ館など数多くのパビリオンに多種多様な塗料を提供したのが関西ペイント。ホルムアルデヒド放散等級F☆☆☆☆、超低VOC(揮発性有機化合物。総揮発性有機化合物量0・3%以下)の鉛・クロムフリー、特定化学物質障害予防規則の規制対象外製品と環境配慮製品が採用された。
 
同社では、大阪・関西万博の重要テーマであるサステナビリティを念頭に、環境負荷低減につながる水性塗料や、作業工程短縮塗料、塩害対策塗料等を提供した。ユーザーからの要望にフィットする耐用年数、コストや性能のバランスが取れる製品が採用に至ったという。

パビリオンだけでなく、会場へのアクセスを担う交通手段関連にも、高機能塗料が活躍している。大阪・関西万博ではEVバスがJR新大阪駅・JR大阪駅・京阪中之島駅~万博会場、舞洲駐車場~万博会場、そして万博会場内の外周道路を自動走行する。
 
この3ルートに、日本ペイント・インダストリアルコーティングスの自動運転用特殊塗料が採用されている。走行ルートには高速道路やトンネル内、夢洲と舞洲をつなぐ夢舞大橋、万博会場のシンボルとなる大屋根リング下の道路など、GNSS精度低下の懸念、マップマッチング適用が困難な箇所があり、車両の自己位置推定が難しいことが課題であった。この特殊塗料はこうした課題を解決。自動運転車両に搭載されているLiDARセンサーを認識できる。この塗料を走行経路に塗装することで、車両に搭載されたセンサーがラインを認識・追従し、自動運転を実現する。

塗装するだけで自動運転用のインフラ整備ができるため、比較的安価な費用で導入やメンテナンスが可能。さらに、路面と同化する色の設計が可能で、道路の路面標示と誤認しにくく、安全面や景観にも配慮している。自動運転バスを利用した人からは「万博に関係してかアトラクションのように思えて楽しい」「未来のバス交通のシーンがうかがえる」といった感想があった。
 
なお、トラブルで一部自動運転を取りやめていたが、大阪メトロは5月29日、原因が特定できたとして、自動運転を再開すると明らかにした。問題箇所を改修した上で自動運転の再開日程を発表するとしている。(塗料報知)