【決算】関西ペイント、国内が二桁の増益に
関西ペイント(毛利訓士社長)は5月12日、2025年3月期連結決算を発表した。同期の売上高は前年同期比4・7%増の5888億2500万円、営業利益は同0・9%増の520億5千万円、経常利益は同14・9%減の491億300万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同42・9%減の383億600万円であった。
営業利益は、固定費の増加があったものの、原価低減や販売価格の改善などに取り組んだ結果、横ばいとなった。しかし、経常利益は、超インフレ会計による正味貨幣持高に係る損失や為替差損の計上、持分法適用会社において、のれんなどの減損損失を計上するなど、持分法による投資利益が大幅に減少したことなどから減益。当期純利益も、前年に計上の一過性特別利益の影響がなくなったことや、早期割増退職金や事業撤退損などの一過性の特別損失の計上により減少した。
各セグメントの状況は、日本について、自動車分野では一部自動車メーカーの生産・出荷停止等の影響で自動車生産台数が前年を下回ったものの、販売価格の改善に取り組んだ結果、売上高は前年を上回った。船舶分野も、外航船向けの市況は好調に推移。しかし、工業分野、建築分野および防食分野では、市況低調などの影響により販売を拡大できず、トータルで売上高は前年を下回った。セグメント利益は、一部原材料価格の低下や、販売価格の改善に取り組んだことで前年を上回った。この結果、売上高は同0・9%減の1638億9600万円、セグメント利益は同11・5%増の239億1900万円となった。
インドは、建築分野で販売促進活動を推進したが、市場環境の激化や低価格品へのシフトで、売上高は前年を下回った。一方、自動車生産台数は安定推移で、自動車分野の売上高は前年を大幅に上回り、インド全体の売上高も前年を上回った。しかし、セグメント利益は人件費などの固定費が増加し、前年を下回った。この結果、売上高は同4・2%増の1423億3500万円、セグメント利益は同4・1%減の141億9300万円であった。
欧州は、トルコでは、自動車生産台数は減少したものの、販売価格改善の取組みで売上高は前年並み。その他欧州各国は、工業分野を中心とした堅調な需要と新規連結の影響により、売上高は前年を上回った。一方で、セグメント利益は原材料価格が安定して推移したものの、インフレ影響による固定費の増加に加え、持分法適用会社において、のれんなどの減損損失を計上するなど、持分法による投資損失が大幅に拡大し、前年を下回った。この結果、売上高は同15・1%増の1564億6900万円、セグメント損失は9億7900万円となった。
アジアは、中国では、自動車生産台数は前年を上回ったものの主要顧客の需要は伸び悩み。タイおよびインドネシアは、自動車生産台数の減少を受け、いずれも売上高は前年を下回った。一方、マレーシアでは、自動車生産台数が堅調に推移し、販売数量が伸びたほか、販売価格の改善に取り組んだことにより、売上高は前年を上回った。セグメント利益は、自動車分野の減収の影響を受け、前年より減少。この結果、売上高は同4・5%減の686億7千万円、セグメント利益は同12・9%減の91億8800万円であった。
アフリカは、南アフリカおよび近隣諸国の経済は慢性的な電力不足やインフレ圧力により消費が低迷するなか、販売活動の促進に努めたほか新規顧客の獲得により、売上高は前年を上回った。東アフリカ地域では、デモや天候不順の影響などあったものの、建築分野において拡販を進めたことにより、売上高は前年を上回った。セグメント利益についてはコスト削減などに取り組んだことにより、前年を上回った。この結果、売上高は同9・4%増の474億2300万円、セグメント利益は同6・7%増の43億5千万円となった。
その他、北米では自動車生産台数は堅調に推移し、売上高は前年を上回った。一方、セグメント利益は、増収に伴い営業利益が改善したものの、持分法による投資利益が減少したことなどにより、前年をわずかに下回った。この結果、売上高は同8・9%増の100億3100万円、セグメント利益は同2・8%減の32億400万円であった。
今後について、同社グループは第18次中期経営計画を4月から始動。重点方針として、「構造改革による収益性と効率性の強化」、「事業を伸ばす製品開発とDXの推進」、「人材育成と最適配置の両立」、「最適資本構成に基づく積極的な投資と還元」を挙げる。次期の業績予想は、売上高は当期比1・9%増の6千億円、営業利益は同3・7%増の540億円、経常利益は同18・1%増の580億円、親会社株主に帰属する当期純利益は同6・0%減の360億円を見込む。
なお、同社グループは米国の関税問題について、その影響は限定的としている。その理由として、原材料、製品ともに現地調達モデルが確立していること、関税の影響が大きいと想定される北米および中国事業の割合が低いことを挙げている。
ただ、需要産業が被る影響から、自動車分野は米国への生産移管により国内生産台数の減少や米国への輸出原材料のコストアップ、その他塗料全般では各国の景況悪化によるGDPの押し下げにより、併せて売上高で25億円、営業利益で4億円のマイナスを予想している。