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高耐食性めっき対応のマグネシウム含有亜鉛末塗料

高耐食性めっき対応のマグネシウム含有亜鉛末塗料<日新インダストリー株式会社 川西 紀哉>

近年、成長著しい高耐食性めっき市場。今まで確立されていなかった補修剤について、補修塗料業界で初となる、マグネシウムを含有させた高耐食性めっき対応の「マザックス(MAZAX)」を紹介する。

キーワード

高耐食性めっき、補修、亜鉛末塗料、ジンクリッチペイント、マグネシウム

1.はじめに

「マザックス(MAZAX)」は、乾燥塗膜中に亜鉛(Zn)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)を含有する亜鉛末塗料(ジンクリッチペイント)であり、成長著しい高耐食めっき市場向けの補修剤として開発された新発売の補修塗料である。

当社は、亜鉛めっきの補修剤および補修塗料を専門に取り扱う塗料メーカーである。当社のジンク塗料は4種類あり、それぞれ使用している顔料の違いにより仕上がり色が違う。さらに、近年の新設溶融亜鉛めっきは美しい輝きを持つ仕上げとしていることから、補修後に周囲との色合わせに使用するアルミを主体とした「ガルバーコート」も上市している。

さて、亜鉛めっきは鉄を長期的に錆から守るための技術で、金属表面に亜鉛の被膜を形成する方法であり、インフラ用の鋼材に広く用いられている。

こういった溶融亜鉛めっきの鋼材を現場にて加工したときなど、切断や溶接した箇所について、亜鉛めっきが剥離して鉄の地肌が出てしまうため、すぐに錆が発生してしまう。そこで、溶融亜鉛めっきと同等の成分を配合した亜鉛末塗料を塗布することで、周囲と同様に長期間の防錆をさせることができる。これまでの亜鉛末塗料には、亜鉛系、亜鉛アルミ系があり、乾燥塗膜中の亜鉛末含有量を重視する場合と、仕上がりの色を重視する場合とで使い分けをする傾向があった。

2.高耐食性めっきとその補修について

100年防食構想”により、従来の溶融亜鉛めっきよりもさらに優れた耐食性を持つものが求められ、溶融Zn-Al-Mg合金めっき(高耐食性めっき)が開発された。2000年より実用化されたこの高耐食性めっきは、開発当初は促進腐食試験による評価が主体であったが、近年では、長期の屋外暴露試験結果の報告も見られるようになり、より信頼性のおける耐食性データが揃いつつある。そのため、公共工事等でも今後の活用が見込まれている。

しかしながら、高耐食性めっきの切断面や溶接後の補修方法については確立されておらず、従来のジンク塗料を使用しているケースがほとんどであった。また、高耐食性めっきの耐食性は従来の溶融亜鉛めっきに比べて格段に向上しているのに対し、補修剤が従来と同じでよいのかという声や、高耐食性めっき鋼板メーカーの推奨する補修塗料の中には、上塗りができるもの・できないもの等が混在しており、ユーザーが選定に迷うケースが多々発生していた。そんな中、ある客先から、高耐食性めっきと同配合のジンク塗料を作って欲しいと依頼があり、当社は開発に着手することになった。

開発目標として、①乾燥塗膜中に亜鉛/アルミ/マグネシウムを含有すること、②従来の亜鉛アルミ系亜鉛末塗料よりも防錆力で優れること、③上塗りが可能であること、の3点を大きな開発目標として取り組むことにした。

3.「マザックス(MAZAX)」の開発

こうして開発に着手された「マザックス(MAZAX)」の主な特長としては、補修塗料業界で初めてマグネシウムを含有させた点にある。塗料に含有させる顔料としては粉末もしくはペースト状が基本であるが、マグネシウムの粉末は通常、溶接ワイヤーや煙火原料、グリニャール反応材、脱硫・脱酸等に利用されており、最も細かい粉末でも粒径が最低150μのものが限界であった。また、マグネシウムの金属は非常に硬く、発火性も高いことから、これ以上の粉砕は不可能であった。

防錆塗料として、当社で従来から販売している高濃度亜鉛末塗料の推奨膜厚は80μである。そのため、粒径150μのマグネシウム粉末をそのまま含有させると、塗膜表面に凹凸ができる可能性が高かった。試験的に従来品である当社ジンク塗料にマグネシウム粉末を添加し、促進腐食試験を行ったところ、塗膜表面に飛び出た形となったマグネシウム粉末が点錆を発生させ、腐食に影響を与えるという課題が見えてきた。特に、マグネシウム粉末の添加量を多くしたときに顕著にこの傾向が見られ、解決にはもっと粒径の細かいマグネシウム粉末を使用する方法しかないと考えられた。

しかしながら、マグネシウム粉末は先に述べたとおり、これ以上の粉砕は難しく、マグネシウム粉末単体での使用をあきらめるより方法がなかった。

マグネシウム粉末が単体では使用できないことで、次に考えられるのは合金粉末であった。その中で、アルミニウムとマグネシウムを5050で合金にしたものが最も細かい粉砕をすることができ、平均粒径45μまで実現できることが分かった。この合金粉末(以下、アルマグ合金粉末)を使用することで、乾燥塗膜中に亜鉛、アルミニウム、マグネシウムを含有させることができるようになった。それでも従来製品に使用している亜鉛末等の顔料に比べると粒径は大きく、当初の実験と同様に、腐食が発生することが懸念された。

こうして何通りもの配合を作成しては促進腐食試験を行う中で、次に述べる仮説が成り立ち、亜鉛粉末と亜鉛フレーク粉末の併用を試みたのであった。

001aアルマグ粉写真

001b

写真1 アルマグ合金粉末 (上:粉末写真、下:顕微鏡写真)

<続き、4.亜鉛粉末と亜鉛フレーク粉末の併用>

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