2024年度塗料実績、高付加価値化が単価押上
日本塗料工業会(毛利訓士会長)は2024年度塗料実績を発表。販売金額はプラス推移であったが、数量は生産、販売ともにマイナスで着地した。同工業会が3月発表した2025年度需要予測では、前年度の低調傾向から完全には脱せず、全体的には予断を許さない状況と見込む。分野別では電気機械・機械・金属製品など工業関連はわずかながら回復傾向としており、粉体や機能性塗料市場の成長などから、さらなる回復を期待したいところだ。
日本塗料工業会がまとめた2024年度(2024年4月~2025年3月)の塗料実績(経済産業省統計調べ)によると、生産数量は143万8042tで前年度比0・8%減、販売数量は148万1563tで同1・6%減だった。一方、販売金額は7432億8500万円で同1・5%増と4年連続の増加。市場は、依然として原料高や運搬費などコスト上昇圧力が強いが、高付加価値製品の需要が単価上昇を後押ししている。
数量減の背景には、円安による原材料高や「2024年問題」に伴う物流費増加に加え、工業用塗料では生産調整や投資抑制が影響。特に自動車や一般機械向けが市場を押し下げた。しかし、自動車生産は半導体不足解消により回復傾向で、EV・HEV向けも堅調。補修用や電気・金属・機械分野も設備投資増で底堅さが見られる。
一方、建築分野は省エネ改修や大規模修繕が続き、遮熱・断熱・高意匠など高付加価値塗料の採用が進む。都市圏の再開発やマンション改修は活発だが、戸建リフォームは低迷。家庭用はDIY需要が一部堅調も、小売市場は天候不順が響いた。
船舶分野は新造・修繕とも堅調、構造物はやや減速するも内需拡大に期待感がある。トラフィックペイントはカラー舗装が好調だがコスト増で利益圧迫。全体では利益確保を意識した市場運営が求められている。
在庫数量は9万5106t(同3・3%減)と適正化が進行。業界では、コスト高継続と人手不足など社会的課題の強まりから、収益重視とともに、省エネ・環境対応型市場の拡大が成長の鍵になるとみており、各社の対応力が注目される。