【万博】「未来社会」の建築見る
観光経済新聞、東京交通新聞、塗料報知、農村ニュース、ハウジング・トリビューンの専門5紙誌は2025年度の連携企画第1弾として、4月13日に開幕した「大阪・関西万博」をテーマに取り上げた。各紙誌が見た万博、各業界の万博関連の動きをリポートする。
木材など多様な素材が一堂に
「未来社会の実験場」のコンセプトを掲げた大阪・関西万博。その数々展示の受け皿となるパビリオンなどの建築も万博の大きな見どころの一つだ。その万博のシンボルが「大屋根(リング)」である。万博会場メインプロデューサーで建築家の藤本壮介氏によるデザインで、「多様でありながら、ひとつ」という万博の理念を表す。

世界最大級の木造建築物「大屋根(リング)」
主に集成材やCLTを使用し、建築面積(水平投影面積)は約6万㎡、リングの幅30m、高さ12m(外側は20m)、内径約615mの世界最大級の木造建築物で、全長は2㎞。寺社仏閣などで使用される日本の伝統構法「貫構法」を採用したことが特長で、「貫」と呼ばれる横架材で柱どうしを連結させるものだ。柱材の5割は四国産のヒノキ、残り5割がフィンランド産の欧州アカマツ、梁材は福島県産のスギで、これらを集成材に加工して使用する。また、「スカイウォーク」の床の役割も兼ねる屋根は愛媛県産のヒノキを原材料とするCLTだ。
大阪府と大阪市による夢洲の会場跡地活用の「マスタープラン」を策定中。「リング」の北東側約200mを原型に近い形で活用、また、南側の約600mを当面保存する案が示されている。今夏にもプランを確定する計画で、万博のレガシーがどのように次代に残していくかが注目される。
一方、保存部以外の部分について、解体後の木材再利用の取組みも始まっている。日本国際博覧会協会が譲渡先の公募を始めており、来年2月以降の引き渡しを計画している。今、わが国の建築業界は木造へのシフトが急速に進みつつある。世界最大級の木造建築物は、その技術を示すだけでなく、背景にある環境対策、循環型社会の形成などの姿勢を世界にアピールするものでもあろう。閉幕後の保存・活用までも含めた万博であってほしい。
そうした視点からも注目されるのが、日建設計が設計した「日本館」。「入口と出口」、「表と裏」、「内と外」といった境界を設けない円形状のデザインにより同館のテーマ「循環」を表現する。280組、560枚のCLTを内壁材、外壁材として利用し、全体で、熊本県、岡山県、高知県産のスギ木材によるCLT約1600㎡をCLTを使用する。このCLTは、閉幕後に日本各地でリユースされることを前提とし、解体のしやすさに配慮している。
このほかにも注目される建築物は多い。「大阪ヘルスケアパビリオン」は、複数の局面で構成する透明膜屋根を採用。膜材に高機能フッ素樹脂をフィルム状にした透明な「ETFE膜」を使用し、1万もの鋼管を丸いジョイント2500個でつなぎ、複雑なトラス構造の屋根を形成する。「Dialogue Theater‐いのちのあかし‐」では、奈良県と京都府から3つの廃校舎を移築、3つのパビリオン建築として再生した。いずれも昭和前半に建築された木造校舎で、丁寧に分解し一つひとつの部材をチェック、さらに一つひとつの部材を組み立てて新たな形に作り上げた。
竹中工務店が建築した「森になる建築」2棟は休憩所として活用されている。直径4・65m、高さ2・95mで、生分解性プラスチック「酢酸セルロース樹脂」を材料に、3Dプリンターで構造体を現地で出力。外装には植物の種をすきこんだ和紙を貼り付けた。日本初の「酢酸セルロース造」であり、使用後には廃棄物にならず自然に還る。「未来社会」の建築を見て歩くのも、万博の楽しみ方の一つであろう。(ハウジング・トリビューン)