町田ひろ子氏講演 、広島こども園PJ事例公開
JAPANTEX2025が11月19日からの3日間、東京都江東区有明の東京ビッグサイトで開催された。初日の特別講演には、町田ひろ子アカデミー校長・町田ひろ子氏が「子供達が世界で活躍できる豊かな感性を育む、こども園の環境づくり」をテーマに登壇した。長年インテリアを通じて住環境提案を続けてきた同氏は、広島のこども園プロジェクトを中心に、最新の知見と実践事例を紹介した。
世界の保育施設は「豊かな色彩」が共通点であり、ポーランドやデンマークなどでは暖色やユニークな色使いが一般化している。一方、日本は木質中心で色が少なく、刺激環境という面で改善の余地があるという。町田氏は「色は幼児の脳に刺激を与え、感情や想像力を育む重要な環境要素」と説明し、乳幼児期の色彩環境が認知発達に影響する〝神経美学〟の知見も示した。

モネの睡蓮の池をイメージしたエントランスホール
広島のこども園では、アートを軸にした「色彩教育×ウェルビーイング」を設計の中心に据えた。入口となるエントランスホールは特にこだわり、既存フローリングをタイルカーペットに変更。色はモネの睡蓮の池をイメージしたブルーとライトグリーンで構成し、来訪者を穏やかに迎える空間とした。また、壁面には日本ペイントの抗ウイルス塗料「PROTECTON®(プロテクトン)」シリーズのブルーとイエローを採用し、清潔性と安心感を両立させた。

日本ペイント「PROTECTON®」のイエローが施されたプレイルーム
保育室や動線となる廊下には、子どもが活動しやすい落ち着いたグレートーンを基調としつつ、部屋ごとにテーマカラーを設定。とくにプレイルームはイエローを中心にブルーを組み合わせ、活発で明るい印象を持たせた。稼働しながら行うリニューアルであったため、施工性やメンテナンス性を園側に丁寧に説明し、納得を得ながら進めたという。
照明は従来の蛍光灯からダウンライトへ切り替え、昼寝時のまぶしさを抑えるなど住宅感覚のやさしい光に刷新。天井材にも木目柄を取り入れ、子どもが仰向けになったときの視界に想像力を広げる工夫を施した。

乳児室では大きな面は穏やかに、小物はカラフルに
講演の最後に町田氏は「インテリアが変われば、子どもの生き方も変わる。働くお母さんを支えるためにも、こども園は〝もう一つの家〟であるべき」と述べ、色彩・素材・光の質を総合的にデザインし、子どもの感性と健康を育む環境づくりの重要性を来場者に強く訴えた。

