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溶剤・塗料に供給不安、イラン情勢で、川上から混乱波及

2026.03.28

緊迫するイラン情勢を受け、国内の塗料・溶剤サプライチェーンに供給不安の影が差す。原油価格の上昇で国産ナフサ価格が11万円/klを超える水準への上昇が見込まれている。エチレンプラントでは、定期修理後も稼働延期が発表されるなど、川上からの原料供給は一段と絞り込まれている。本紙は、3月第2週~3週にかけサプライチェーンでのヒアリング取材を実施。既に溶剤分野では出荷制限や大幅な値上げ要請が始まっており、その影響は塗料メーカーや販売事業者、末端ユーザーへと連鎖的に波及しつつある。本稿では、取材期間中における業界の実態を報告する。
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供給不安の震源地は、中東情勢の悪化に伴うエネルギー供給網の混乱にある。石油精製における物流の要であるホルムズ海峡の封鎖懸念は、日本国内の全産業に悪影響を及ぼす。足元では、東ソーがエチレン生産設備について、4月中旬の定期修理終了後も再稼働を延期すると発表し、川上からの供給が絞られ、川下の蛇口が細くなっていく局面に入っている。

最も早く影響が顕在化したのが溶剤で、3月第2週から慌ただしい動きが見られた。溶剤メーカーでは一部原料の入庫が滞り、供給できない製品が生じはじめ出荷制限に踏み切っており、前年実績を基にした割り当て供給に移行。現状況が続けば「顧客からの4?5月分の先行確保要請も断らざるを得ない」と、ある溶剤メーカー幹部は話す。各社は「4月以降の数量・価格ともに不明」として、1件ごとの個別対応に追われている。大手塗料メーカーも、4月17日付で「適正発注」のお願いを通知し、一部の塗料メーカーでは、「即日値上、50%以上値上」とする対応も打ち出している。別の大手塗料メーカーでは、3月中の在庫は確保したものの、4月以降は予断を許さず、例年にない大量注文の仕分け作業に追われている。溶剤塗料が主力の中堅メーカーでは、受注制限の検討に入り、アナウンス後の駆け込み発注への対応を協議した。

塗料製品への影響はまず溶剤塗料から現れ、次いで粉体塗料へも波及する見通し。水性塗料への影響は限定的だが、樹脂原料の供給遅延が現実味を帯びれば、製品ラインアップ全体に供給不足が広がる懸念があるという。

流通末端の塗料販売事業者やユーザーも対応に苦慮している。販売事業者には各メーカーから「適正発注」の通知が届き、新規客や不自然な大量発注を断るケースが増加。値上げ幅も「吸収しきれる値上幅でない」とし、早急に対応していくとのこと。ユーザー側では、建設分野で資材費・人件費の高騰に加え、塗料確保の困難さから「工事の取りやめ」を選択するリスクも浮上。材料供給面では、建築より水性化が進んでいない工業分野が深刻で、生産の影響を懸念する声が挙がる。

サプライチェーン全体に広がる不安心理は、リーマンショック級の経済停滞を招きかねない状況だ。