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【製品寄稿】鋼構造物用水性重防食塗料ー大日本塗料

1.はじめに

大気汚染の主な原因物質の1つとされる揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)の排出量削減のために、塗料の水性化、低溶剤化、無溶剤化が検討されている。その中でも、塗料の水性化は火災リスクに対する安全性や作業者や周辺環境への環境対策として最も有効な手法である。

近年、重防食分野においても水性塗料の開発、適用性の検討が実施され、実用化が進められている。2016年7月には、一般社団法人日本塗料工業会において水性重防食塗料の塗料規格が制定された。下塗り塗料を対象としたJPMS30(鋼構造物用水性さび止めペイント)と、上塗り塗料および中塗り塗料を対象としたJPMS31(鋼構造物用水性耐候性塗料)である。今後は、日本工業規格(JIS)化への動きがある。 

大日本塗料においては、2012年10月に、水性有機ジンクリッチペイント、水性変性エポキシ樹脂下塗り塗料、水性エポキシ樹脂中塗り塗料、水性ポリウレタン樹脂上塗り塗料、水性ふっ素樹脂上塗り塗料を発売し、これらで構成される「DNT水性重防食システム」を市場に提供している。

2.DNT水性重防食システム

「DNT水性重防食システム」は、水性有機ジンクリッチペイント(商品名:水性ゼッタールEP―2HB)、水性変性エポキシ樹脂下塗り塗料(商品名:水性エポオール)、水性エポキシ樹脂中塗り塗料(商品名:水性エポニックス中塗)、水性ポリウレタン樹脂上塗り塗料(商品名:水性VトップH上塗、水性Vトップ#100H上塗)、水性ふっ素樹脂上塗り塗料(商品名:水性VフロンH上塗、水性Vフロン#100H上塗)を取りそろえている。上塗りをポリウレタン樹脂塗料とする水性ポリウレタンシステムおよび上塗りをふっ素樹脂塗料とする水性ふっ素システムの2種類のシステムを提供している。

これらのシステムの特長としては、①重防食塗装をジンクリッチペイントから上塗り塗料まですべて水性塗料で構成することができる、②すべて反応硬化形塗料(水性ゼッタールEP―2HBのみ2液、1粉末タイプ、他は2液タイプ)であり、塗装塗膜は溶剤形と同等の防食性能、耐候性能を有する、③溶剤形塗料を用いた塗装システムと比較して、VOCを大幅に削減することができる、④溶剤形塗料と比較して倉庫での貯蔵量を大幅に増加できる、⑤塗料中に有害な重金属(鉛・クロム等)を含まない等が挙げられる。

この「DNT水性重防食システム」では、鋼材に直接塗装されるジンクリッチペイントまたは下塗り塗料においても水性化を実現している。特に海岸の近くなど腐食条件の厳しい環境において長期的に鋼材を腐食から護るためには、鋼材に対して犠牲防食作用を示す金属亜鉛を含有するジンクリッチペイントの適用が効果的である。

水性重防食塗料の塗装仕様例


一般に、大気中における鋼材の腐食は、鋼材表面に水分および酸素が存在する場合に局部電池が形成されて電気化学反応が生じ、錆が生成されることにより進行する。水性のジンクリッチペイントまたは下塗り塗料を鋼材に塗装するということは、錆の発生要因の一つである水を鋼材表面に直接塗り付けることになるが、これら塗料中の水が腐食要因として作用しないような塗料設計をしている。

また、ジンクリッチペイントから上塗り塗料まですべて反応硬化タイプとなっており、主剤および硬化剤にそれぞれ含まれる樹脂同士が反応、架橋することにより、強固な塗膜が形成される。このことにより、長期的に溶剤形と同等の塗膜性能(防食性、耐候性、耐衝撃性、耐薬品性など)を発揮することができる。

さらに、重防食塗装をすべて水性塗料で構成することができ、塗料中の主溶媒および希釈剤も水であることから、既存の溶剤形塗料を用いた塗装システムと比較して、塗料から放出されるVOCを新設塗装系では約90%、塗替え塗装系では約85%削減することができる。したがって、本塗装システムを採用することにより、塗装時の有機溶剤に起因する臭気もほとんどないことから、塗装環境の大幅な改善ができ、ひいては地球環境の維持、保全につなげることができる。

消防法においては、そのほとんどの商品が非危険物としての取り扱いとなるため、倉庫での貯蔵量を大幅に増やすことができるとともに、塗料の希釈には水道水を用いることから、専用シンナーを購入、保管しておく必要もなくなる。

また、重防食塗装系は主に橋梁など大型鋼構造物に適用されることから、屋外環境で塗装されることが多い。従って、塗装時の天候、気温、湿度によっては、塗装後間もないうちに降雨、結露に遭遇してしまう場合がある。そのため、水性塗料を塗装した塗膜が降雨、結露によって溶かされ、流されてしまわないように、塗装後早期に塗膜が乾燥し、水に溶解しにくくなるように設計している。

3.おわりに

「DNT水性重防食システム」は、国土交通省新技術情報システムに登録されており(NETIS登録番号:KK―130038―A)、地球環境に配慮した鋼構造物の維持管理を可能にする技術である。今後、重防食分野における水性塗料の普及に向けた活動を進めつつ、これら材料の更なる性能向上に尽力していく。

大日本塗料 建築・構造物塗料事業部構造物塗料テクニカルサポートグループ  山内 健一郎

※本寄稿は2016年10月27日号(4156号)『塗料報知』の「創立70周年記念特大号」に掲載された内容です。