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SDGsアンケート、若手青年層に聞く:進捗と課題

SDGs達成目標の2030年には、業界の世代交代が進んでいる。その中心となるのが現在の若手経営者層だ。環境面から考えると有利だと言えない塗料材料。それを扱う販・装は〝SDGsという風〟をどのように感じているのか。塗料販売、建築塗装、工業塗装の若手経営層を対象にSDGs業界アンケートを実施した。各業種別に概要をまとめた。

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調査方法:
塗料販売から日本塗料商業組合青年部、建築塗装から全国の昭和会、工業塗装から日本工業塗装協同組合連合会ジュニア会に依頼し、インターネットアンケートを実施。【推進しているSDGs目標】【具体的な事例と取組み状況】【SDGsの不明な部分、専門家に聞きたいこと】【業界全体での取組みに必要な視点】について、SDGsの実施状況や課題を聞いた。有効回答数52件。

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建築塗装の取組みの中で、「目標8:働きがいも経済成長も」、「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」に対し、女性雇用についての回答が散見され、「現場作業において細かいも作業等に向いている傾向がある」との回答があった。過去に女性が活躍する塗装事業者を取材したが、養生を専門に行う部隊を女性が担い生産性を挙げている例もある。「女性だから、男性だから」というより、適切な人材配置により作業効率の上がるケースがあるようだ。

製・販・装での業界全体で取り組む視点としては、廃塗料の再利用や未使用塗料の返品が挙げられた。こちらはサプライチェーン全体で考えていく課題となるが、少量荷姿やゴミの出づらい資材開発等は、少しずつだが改善もされる動きがある。

工業塗装では「目標:エネルギーをみんなに。そしてクリーンに」に対し、利益にも直結するエネルギーを効率良く使用するという点に多くの回答を得られた。具体的な例では、省エネによる工場運用や太陽光パネルの設置が挙げられる。CO2排出量の低減では低温焼付塗料の推奨などもある。今後専門家に頼りたい部分でも電気・ガス等の省エネ方法等が挙げられ、塗装のエンジニアリング企業には顧客のニーズとして捉えることができるだろう。環境負荷低減もそうだが、昨今のエネルギー価格上昇に伴い利益にも直結するため、改善が求められている。

業界全体で取り組む視点としては「身の丈にあった目標設定」という回答が印象に残る。工業塗装事業者では、焼付塗装によるCO2排出や溶剤塗料の塗装によるVOC排出など環境負荷がかかる部分はどうしても発生してしまう。その中でも、現実的な目標設定を決め成功例や行政支援などを促して、推進していくことが現実路線だと同アンケートから読みとれた。

塗料販売では、SDGsへの対応が「新卒採用活動をするうえで経営に取り込む不可欠な要素」としている回答があった。持続経営のために採用や教育、働き方改革を進めていく。また、SDGsへの取組みを数値化し、社外へ発信することで、経営層と従業員双方の意識浸透を狙う例も見られた。

顧客に対しても、環境にやさしい塗料だけでなく、ゴミの減るような商品などを提案するという塗料販売業もある。業界全体の取組みには、DX化という声が最も多かったのも塗料販売店である。おそらく、塗料の流通に対して業界共通のコードや発注システムの連携等に不十分な部分からこうした回答があるのではないのだろうか。サプライチェーン全体で考えた際に自社だけのDXでは生産効率向上には限界があり、メーカーや顧客との連動により、効率アップを達成していきたい課題だろう。以下に回答内容を紹介する。

【SDGs②】取組みを実施している方にお聞きします。具体的な事例と進捗状況は?

(建築塗装)
・11,12,14:使用後の塗料と洗い水の分離作業を日常の業務で続けている
・従業員がワークライフ・バランスが取れるよう管理をしており、従業員相互のコミュニケーションが取れてきていると感じる。
・資材ロスの軽減
・女性雇用を促進していますが、難しい面がある。
・雇用に関しては、男女分け隔てなく採用している。現場作業が主となるが、女性の方が塗装の細かい作業に向いている傾向があり、率先して塗装作業をしてもらっている。また弊社は地域密着型の会社なので、拠点としている地域の施工が多い。その際に意識していることは、利益よりも先ずはお客様の笑顔と満足度です。弊社がお客様に寄り添った施工をすることで、満足度が上がり地域にも伝染していくと思っている。何か住宅で困ったことがあれば、あそこの会社に相談しようという安心感は街づくりにおいて欠かせない物だと思っている。。
・売り上げ目標設定、利益向上で分配。目標まで残り20%、効果は感じれない

(工業塗装)
・社員への所得の還元
・溶剤の削減、粉体塗装と低温塗料の推奨
・ 当社は人権、労働のところに向けて具体的な取組をしている
・既存エネルギーの使用削減と再生可能エネルギーの使用検討
・目標8 塗装ロボットの導入 4台導入済、楽しい職場環境、食堂の設置と社内調理の実現済、AIを利用した評価制度の導入、目標12自家消費の太陽光の発電の導入(210KW)済 消費電力の15~20%発電 少しづつでもやってみると少しづつでも実現する
・太陽光パネルの設置をして一部工場の電力として使用している

(塗料販売)
・テレワーク等のDXを用いた働き方改革
・女性の活躍推進 働きやすい制度設計につながる
・新卒採用活動をするうえで不可欠な要素となってきている
・省エネルギー設備の活用など
・現状は、SDGsを意識して取り組んでおりません。これから、これらを意識しながら経営していこうと考えている。しかし、現状でもできている部分もある。例えば、「目標8働きがい」は、現状でも、目標を持たせたり、それに応じた評価、福利厚生の充実、週休2日(当たり前ですが)など。「目標9」は、メーカーさんはいろいろな商品を開発してきます。その中で、よりよいものは提案を推進している。「目標11」は、塗料・塗装で、耐久性をあげたり、色彩豊かな街となることは、その一つとなるので、それを提案に織り込む。 「目標12」は、つかう責任=何を商材として選定するのか?という意味で、取り扱うものの責任があると考えている。「目標13」は、どんな塗料を使ってもらうのかで、大気汚染影響が変わってくると考える。「目標17」は、販売網を担う販売店は、特に製造するメーカーさんが目指すところに同調した行動が必要と考える。 これらの目標を意識することで、より目標の推進にはなると感じる。
・部長職で、女性が活躍し成果につながっている
・エコキャップ運動の推進 68.5kg回収 CO2/205.5kg削減、ワクチン34人分
・塗料の販売をしているのですが、環境にやさしい塗料だけでなく、ゴミの減るような商品などを提案する様に心がけている。反応は、値段にて動いてしまう方が大半である
・社内では日々、CO²の削減(電気、燃料、ガスの使用量削減)、太陽光発電、水使用削減、廃棄物削減、環境配慮商品の開発、環境配慮商品の使用を実践しており、担当を決め目標に向けて取り組みを行っており、その活動内容はHPにて公表をしている。 取り組みを通じて、従業員の環境に対する認識が高まり、販売する製品に対する考え方や環境対応の為の代替対応など、お取引先様に対し様々な提案が出来るようになり、問い合わせも増えてきている。
・印刷物の削減やクリヤファイル等のプラスチック製品を使用しない等
・廃棄塗料の削減、(受注ミスによる不要な塗料の仕入れ、在庫の削減などで廃液を削減する等
・資源(エネルギー)の無駄解消、不必要な電源OFFを意識&行動を実行

【SDGs③】推進する上で専門家より不明な部分や聞きたいことはございますか。

(建築塗装)
・日常の業務が既にSDGsに関わっているが、日常の業務に加えて、経営者に加えて社員も自分事と捉えて自らSDGsを推進するには?
・成功例等を含め、実用できるような内容を知りたい
・小規模な会社でもできる事例は知りたい

(工業塗装)
・社内での取り組み方と共有方法、目標の設定方法
・電力・ガス省エネ方法、乾燥炉排気の脱臭方法
・どこと絡めて浸透させようか聞けたら良いと感じる

(塗料販売)
・他社の参考事例や補助金制度など
・特にありませんが、自社が行うことが、本当に全体の目標につながるのか、他の目標のマイナスになっていないのか?部分最適が全体最適になっているのか疑問
・一時的な流行で終わらないか。このまま取り組みが引き続き持続されるのか
・興味を持ってもらえる従業員が少ない。興味をもってもらえる何か?があるのであればお願いしたい
・目標毎の設定の立て方や検証方法などを知りたい
・細かい内容が分からない箇所があるので詳しく記載して欲しい
・塗料業界でできそうな内容があれば取り入れたい
・各企業での取り組み方法を教えていただきたく思っている
・個人も含め、SDGsの知識が業界においてまだまだ認知されていないように思う

製・自業界全体で取り組むには、どのような視点が不可欠だとお考えですか。

(建築塗装)
・経営者も社員も自分事と捉えて積極的に関わる仕組み
・廃塗料を再利用出来るような取り組み
・未使用塗料の返品、少量荷姿
・情報の共有
・二酸化炭素や有機溶剤、産業廃棄物の排出を削減
・廃材が多い業界なので、ゴミの出づらい資材の開発やリサイクルに関しては行政への働きかけがあっても良い
・組合による発信
・行政への働きかけ

(工業塗装)
・無理のない目標設定
・同業種内での取り組み事例や効果の共有
・本質を見失わない行動
・低温タイプの塗料を増やして欲しい
・教育におもきを置くことが必要なのではないかと思う
・CO₂排出情報の共有化
・各種材料の有害物質の削減
・SDGs対応した塗料・設備の確立。各企業の実施策の共有
・塗装業態として共通の目標を見出すべき
・産業廃棄物削減についての取り組みなどの共有
・目標の絞り込みと身の丈に合った方針設定
・行政への働きかけ及び連携

(塗料販売)
・業界団体連携による行政関連情報の把握体制構築
・業界全体へSDGsの取り組みを発信しないといけない。特に学生に対して
・一時的にコストのかかることもあり、それをサポートしてくれる仕組み。・製造メーカー自体は、SDGs目標を掲げているが、製品それぞれが本当に即しているのか?使う側としては、メーカーそのものの行動も大切ですが、我々は商品一つ一つがどうなのかも大切なのではないか
・配送関連におけるSDG’sの活用
・産廃、廃液に低減
・メーカ塗料のSDGs推進商品の効果の情報開示の具体化
・SDGs の対象となる商品を使用した場合の補助金など
・活動内容の共有化
・CO2削減
・塗装する際にシンナーが揮発する際にVOCが発生するので、メーカーとして水性化をいかに進めていくか
・会社 業界での動きは当然だがいかに社員目線で落とし込むことができる内容か(社員への勉強教育)。ルールをつくっても実行、影響力が大きいのは社員が実行できる内容であることなので、理解させ、行動できる内容をつくる
・環境配慮したことと、社内での自立した成長を課題にした内容で取り組みできたら考えたい
・14.海の豊かさを守ろう 海洋汚染の問題。マイクロプラスチックを出さない取組み
・塗料業界において情報発信が少なく課題がわからない
・DX
・行政への働きかけ
・社用車を実用的な車種へ(大型→中・小型。エコカー等)