WEB塗料報知|塗料・塗装、コーティング業界のプラットフォーム

〈1〉塗装店向け採用・教育の指南コラム

1.1 仕事がデキるようになった社員職人が独立をしてしまう6つの理由

著者プロフィール:

日本建築塗装職人の会 会長 青木忠史
「日本を代表とする建築塗装店向けに展開する経営コンサルタント。
29歳の時、家業の建築塗装店を継ぎ、6,000万円超の借金をわずか3年で完済。そこから生まれた「地域密着型経営」、「職人直営専門店」の塗装店戦略を体系化し、コンサルタント業へ。これまで7,000件以上の塗装店経営者の経営相談を受け、700社以上の塗装店経営者へ直接経営指導してきた。

〈コラムの概要:著者インタビュー〉

===================================================

社員を入れて育てて行ったら、いずれ会社を任せられるようになるものだと思うものです。ところが現実はそうではありません。多くの塗装屋では育てた社員職人の多くは、仕事がデキるようになったら、独立をしてしまうのです。

そのため、多くの代表親方は「自分には人を育てる力が無い・・」「自分にはマネジメント能力が無い・・」「経営は難しい・・」「自分には人間的な魅力が足りない・・」などと思い込んでしまっています。

しかし、本当にそうなのでしょうか。

私は、多くの塗装屋の代表親方が同じような発言をしていることに対して率直に疑問を持ちました。そして、あらゆる方面から対策を考え、その施策を沢山実行してきました。

その結果、どんな塗装屋でも、どんな代表親方でも、原理原則どおりに実行していくことができれば、着実に会社を作っていくことができる経営の方法を発見することが出来たのです。

その方法を私は「職人の会式 塗装屋経営」と表現しています。

そして、この『WEB塗料報知』コラムで順にご紹介していく予定なのですが、今回はまず、なぜ仕事ができるようになった社員職人は独立をしてしまうのか、その理由をお教えしたいと思います。

「失敗をする方法を知れば失敗しない」という言葉もあるとおり、今回紹介される「仕事がデキるようになった社員職人が独立をしたくなる理由」を知ることで、それを防ぐことができるようになり、会社を着実に前進させていくことができるようになるはずです。

当てはまるものがあった人はこのまま読み進めてみてくださいね。

では、早速始めますね。

目次
1-1.仕事がデキるようになった社員職人が独立をしてしまう6つの理由
 理由1 指導方法が確立されていないこと
 理由2 キャリアプランを提示していないこと
 理由3 指導者側が独立を推奨するような指導方法を採っていること
 理由4 会社の未来が不安であること
 理由5 会社のメンバーことの不仲があること
 理由6 間違った採用を行っていること
着実に会社を前進させている塗装屋さんの採用3つのポイント

 

理由1 指導方法が確立されていないこと

仕事がデキるようになった社員職人が独立をしてしまう1つ目の理由は、「入社後の指導方法が確立されていないこと」です。

具体的には、とりあえず、現場仕事がデキる親方をつけたり、仕事が出来ない期間には、手元に置いていろいろな現場の応援人材として活用したりして、「慣れさせる」ことを半強制的に行っていることです。

この弊害は3つあります。

親方によって指導方法が違うため、新人は親方が替わる度に叱られたりして、愛社精神を失っていく

②指導方法が確立されていないことから、仕事の全体像を覚えるための時間が余計にかかり、覚えている間は、子方にとっては継続的にストレスを感じる期間となり、そこから開放されたいために、仕事を覚えたら独立をするというように考えてしまう

③指導方法が確立されていないため、子方は「見て盗め方式」で仕事を覚えることにより「指導を受けたのではなく自分で見て掴んだ」と勘違いをし、愛社精神を失い独立を志すようになる。

このようなことから、入社した社員職人は独立へと気持ちを傾けていってしまうのです。そのため、「指導方法を確立をさせていく」=業務マニュアルを作成していくということがともて大切になっていくということなのです。

 

理由2 キャリアプランを提示していないこと

仕事がデキるようになった社員職人が独立をしてしまう2つ目の理由は、「キャリアプランを提示していないこと」です。

そもそも、「キャリアプランって何だ?!」という話でしょうが、キャリアプランとは、一般企業で言うと、平社員→主任→係長→課長→部長というように、昇進をしていく設計を指しています。

塗装屋では、子方→(リーダー)→親方→職長→責任者と、「職人の会式」では定義しています。

この「キャリアプラン」の説明はまた別途詳しくする予定ですが、キャリアプランを提示しないことによって、社員職人は現場仕事を覚えた段階で、「自分は仕事は一通りできるようになった」と勘違いをし、その先はこの会社には無いから、ずっと現場親方をやっているのなら、自分で独立をしたほうが良いと判断をするのです。

そのような判断の下で、多くの一人親方さんは苦労もしているのですが、それでも、キャリアプランで未来が見えないことから、独立を決断させてしまうきっかけを与えているということは、知らなければなりません。

そのため、「キャリアプランを提示していくこと」は、独立欲求を防ぐ力にもなるということなのです。

理由3 指導者側が独立を推奨するような指導方法を採っていること

仕事がデキるようになった社員職人が独立をしてしまう3つ目の理由は、「指導者側が独立を推奨するような指導方法を採っていること」です。

具体的には、社長自身が、社員に対して動機付けをする時に「そんなんじゃ、一人になってもやっていけんぞ!」等と暗に独立を示唆してしまっているケースが多々ありますし、また「お前も仕事を覚えたら自分でやる位の気概を持って仕事を覚えなあかんぞ」などと明確に独立を推奨しているケースも多々あります。

また現場親方も、自分に付いた新人社員に対して、自分の若かった時期に一人親方で仕事を請けていた時の苦労話や武勇伝をして「仕事を覚えたら、お前も一度は一人でやってみたほうがいいぞ。世間の厳しさが分かるぞ」等と、仕事の習得を動機付けているつもりが、独立を推奨していることも多々あります。

このようなことから、社員が独立をしたくなる気持ちを徐々に育んでいっているのです。

そのため、このような独立を推奨するような動機付けを止め、「独立を推奨しない動機付けの方法」を行っていくことが大事となりますね。

 

1 2