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【決算】2024年3月期各社の決算状況、自動車用塗料回復

上場する主要塗料メーカーの2024年3月期通期決算が出揃った(集計12社)。集計企業の内、売上が対前年度比増加した企業は7社。利益(最終利益)で対前年度比増益した企業は8社であった。


建築分野においては、都市部や首都圏の大規模再開発や物流施設、工場等の改修による需要はあるものの、資材価格の高騰や職人不足の要因もあり需要を押し下げている。一方、自動車分野は生産台数が前年度より上回り、好調の決算を反映している。
    
こうした需要動向の中、塗料製品の価格改定による値上が寄与し、売上は増加傾向。利益については、原材料費低下も見られはじめ、改善してきている。
 
関西ペイントを例にとると、原材料費を挙げれば、2023年度3月期が売上原価率73・0%に対し、2024年度は69・1%。決算書の中でも「一部の原材料が低下」とあり、増益要因となった。
 
また、海外事業でドル建の事業を展開している企業は為替差益を大幅に計上したことで、経常利益を押し上げた。
 
国内の建築分野は、改修投資が旺盛にも拘わらず、出荷数量は戻ってきていない。国土交通省が発表した2023年度の建設投資見通しは、前年度比2・2%増の70兆3200億円(出来高ベース)。うち民間建築補修(改装・改修)投資は、同4・7%増の9兆3600億円であった。一方で、日本塗料工業会の2023年度塗料需要見込みは、建築用塗料が主要となる「建物」分野の予測数量は前年度比2・0%減の約32万7千t。特に戸建て関連は冷え込んでおり、メーカー決算でも出荷数量増要因が主流ではなく、値上げによる増収が寄与したようだ。
 
一方、自動車用分野(新車)は自動車生産が回復。日本自動車工業会発表の全車種合計は、前年度比10・1%増(2023年4月~2024年2月)で推移。自動車分野を展開している企業は好調だった。加えて、価格転嫁も進み、売上を押し上げた。しかし、中国市場では苦戦している。日系自動車メーカーの販売不振もあり、同市場が軒並み不調。車内用の塗料などはローカルメーカーの躍進も目立ち始め、競争が激化している。
 
次期見通しについて、概ね市況が回復しきれていない分野もあることからも売上増を見込む。集計した12社の内、増収増益(最終利益)の見通しとしたのは7社。国内は収益率回復を掲げており、価格転嫁が進んでいない製品は引続き上昇傾向にりそうだ。また、各社が分散技術等を武器に新市場へ挑戦していく動きが見られるだろう。