ABA 富山勉強会・工場見学レポート
アルミニウム合金材料工場塗装工業会(ABA、宮越一郎会長)は8月4日、富山県富山市の富山国際会議場で「富山勉強会2026」を開催した。会員企業や地元塗料販売店など62人が参加し、業界を巡る最新課題について知見を深めた。冒頭、宮越会長があいさつに立ち、業界の現状と発展に向けた一致結束を呼びかけた。当日は建設分野のDX/RX推進、欧州におけるPFAS規制の動向、産業廃棄物処理の3テーマで講演が行われた。なお、5日には、YKK AP滑川製造所およびYKK AP技術館を見学した。2日間にわたったABAの富山視察をレポートする。

3講演が行われた「富山勉強会2026」
業界の最新課題と高度なモノづくり視察
初日の勉強会では、第一講演として、ものつくり大学名誉教授の近藤照夫氏が「建設分野の動向とDX/GXの推進」をテーマに登壇した。近藤氏は、建設業就業者数の減少や高齢化の現状を解説。タワークレーンの自動化や重機の無人施工などの具体例を挙げ、「DXやロボティクストランスフォーメーション(RX)は目的ではなく、地球や人類の持続可能性を達成するための手段である」と強調した。
続いて、AGC化学品カンパニーの森島直輝氏が「欧州PFAS規制の概要と最新状況について」を発表。欧州での一括規制に対し、日本の業界団体がリスクに応じた適正な規制を求める動きについて紹介した。
本件について各地域での対応が異なっており、米国ではリスク評価に基づく多面的な規制。データがないものにはデータを取得してから規制を行う。州単位によって対応が違うのも特徴である。日本は国連の国際条約決定があれば、順次国内で規制化するという。現在2回目のパブリックコメントを実施中で、6千件が集まり産業ごとの検討をしているという。2027年にフェーズ3へ移行し、制限の決定が官報で交付される。
塗料関連においては、欧州ではフッ素樹脂バインダーやフッ素系界面活性剤などが高い規制リスクとして評価されている現状に触れ、今後の見通しを参加者と共有した。
最後に、富山県の産業廃棄物処理事業者・アイザックの山田賢志氏が「産業廃棄物の最終処分における環境への取組み」をテーマに講演。富山市エコタウンでの廃熱を利用した余剰電力の売電や、塗料の入ったドラム缶を丸ごと破砕・焼却し、中の金属くずを再資源化する先進事例を提示した。さらに能登半島地震での仮置き場管理や、塗装剥離時に生じる強い酸性(高濃度)の廃棄物処理など、現場における廃棄物の課題解決策を紹介した。
3テーマを通じて業界動向や環境対応の最新情報を1日で吸収できる機会となり、参加者は深く聞き入っていた。
YKK APへ工場見学、「N-CueB」や技術館を巡る
富山視察2日目は、YKK AP滑川製造所の見学およびYKK AP技術館の視察を実施した。参加者は、カーテンウォール(CW)製造ライン、スチールドア・外装サイディング製品の製造ライン、さらに今年運用を開始したばかりの大規模カーテンウォール試験棟「N‐CueB(エヌ・キューブ)」を見学。多品種生産に対応する高度な製造技術や最新の環境・塗装設備、厳格な品質試験の現場に触れ、知見を一層深めた。

YKK AP滑川製造所で工場概要を聞く参加者
CW製造ラインでは、カタログ製品からオーダー品までの加工・組立てに対応しており、既製品であっても物件ごとに切断箇所や接合金具が異なるため、多品種に応じた柔軟なライン構成が特徴である。アルミの表面仕上げは陽極酸化塗装複合皮膜が全体の8?9割を占める一方、要求される耐候性や意匠性に応じて加熱硬化形塗装も使われている。中国・蘇州の大型CWラインに対し、滑川製造所では多品種・小ロットの細やかな生産を強みとしている。
続いて、アルミやスチールのサイディングとスチールドアのラインを見学。サイディングには塗装済みコイルを使用し、特殊な模様にはインクジェット塗装技術も活用。ドア枠の製造工程では電着塗装に加え、自動化が進む粉体塗装も導入されている。
最後に、2026年1月に運用を開始した大規模カーテンウォール試験棟「N‐CueB」を訪れた。同施設は同社品質本部が管理し、実際の製品を用いた気密・水密・耐風圧・層間変位追従性などの試験をワンストップで実施できるのが強みだ。近年頻発するスーパー台風など自然災害の激甚化を受け、要求スペックが高まる中で、安全性を担保する中核施設として大きな注目を集めた。
見学を通じ、高度な自動化技術と厳しい品質管理、環境対応を両立させる現場の姿勢に参加者は深く感銘を受けていた。

YKK AP技術館を見学
続いて、一行は富山県黒部市にあるYKK AP技術館へ移動。同館は1959年に竣工したアルミ建材発祥の工場をリノベーションし、2024年11月に開館した展示施設である。同社のモノづくりの歴史や技術への挑戦を、実際の製品や設備などを通して紹介している。参加者は、金型製造の自動化やリサイクル技術の進捗等、同社のモノづくりへの精神を深く学ぶことができた。
