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伝統工芸品の里を訪ねる「紀州漆器」

うるわし館 紀州漆器伝統産業会館

 

会津塗り(福島県)、山中塗・輪島塗(石川県)などと並んで日本三大漆器として知られている紀州漆器は、和歌山県海南市の北西部「黒江地区」を中心に生産されている。現在でも職人の町としての家並みが残っており、町を散策する観光客も多い。

紀州漆器の歴史は室町時代、近江系木地師によって渋地椀つくられたのが始まりだといわれている。江戸時代になって庶民の日用品としての需要が高まるにつれ、いっそう漆工が盛んになり、ついには渋地椀一大産地ととして、その名が知られるようになった。

昭和以降、天流塗、錦光塗、シルク塗などの変わり塗が考案され、紀州漆器の特長を一段と発揮した。昭和24年重要漆工業団地として国より指定を受け、さらに昭和53年2月通商産業省(現 経済産業省)より「伝統工芸品」として「紀州漆器」が、指定されるなど、和歌山県代表する伝統産業として知られている。

紀州漆器の起源は室町時代にさかのぼる

 

紀州漆器伝統産業会館「うるわし館」(和歌山県海南市船尾222)は、紀州漆器伝統産業振興協会が建設を発注し、昭和61年にオープン。紀州漆器の普及・啓蒙に貢献してきた。場所はJR黒江駅とJR海南駅の中間に位置している。JR海南駅では漆で塗られた郵便ポストや漆を施したオートバイを見ることができる。

同館1階が即売・観光情報コーナーで、2階は会議室・展示室、3階は研修室となっている。展示コーナーでは組合の青年部が制作したジャンボ漆器、ジャンボ夫婦雛のこけし、伝統工芸士を紹介した資料などがあり漆器に関する貴重な情報を知ることができる。一般の人も漆器の伝統伎である蒔絵を体験することができる。毎年11月には「紀州漆器まつり」が海南市黒江・川端通りとその周辺で開催されている。「大漆器市」では、産地問屋が軒を連ねて、紀州漆器の即売会開催する。堀り出し物を探したり、まつりを楽しむ人達で賑わう。

昔の風俗を描いた作品


 
「根来塗(ねごろぬり)」は、現在の和歌山県北部の岩出市にある根来寺で、僧侶達が寺用の膳・椀・盆・逗子などの什器を自ら作ったものが始まりと言われている。未熟練の僧侶の手によったものであったため、使用中自然に表面の朱塗りが磨滅して下塗りの黒漆がところどころ露出した。それがかえって趣あるものとして喜ばれ、近代では、朱の上塗り一部を研ぎだし、下塗りの黒地を出す手法が「根来塗」となり、紀州漆器の代表的な手法として現代に至っている。

また「紀州雛」の起源は5世紀という説もあるほど古く、現在のような漆器のお雛様を作るようになったのは昭和初期からである。以来、漆器の産地として名高い「紀州漆器(黒江塗)」の技法を伝承しながら、今も職人によって手作業で作成されている。「紀州雛」は国産の天然素材の木地にこだわり、紀州漆器の漆塗や蒔絵などの伝統的な技法を用いて制作する。手のひらに乗るサイズのミカンのような形の木地に、赤色と青色の本漆を施し、蒔絵の技法で顔と着物を一体一体に手描きで描き込んでいく。ミカン型のほかにもこけし型など、大小様々な形のものがある。