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自動運転に路面塗装、車両位置推定の精度向上

日本ペイント・インダストリアルコーティングス(NPIC)は9月6日、同社が開発した自動運転用塗料「ターゲットラインペイント」の採用事例を公開した。

慶應義塾大学SFCで運行している自動運転バス

 

関東初の今回の事例は、神奈川中央交通と慶應義塾大学SFC(慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス)研究所が共同研究し、既に運行している自動運転バスの走行システムへの採用となる。自動運転用塗料を路面に塗装することで、バスが走行する位置推定の精度向上に寄与している。慶應義塾大学SFC構内を走る自動運転バスは、公道0・9㎞、大学構内1・3㎞の計2・2㎞。そのうちターゲットラインペイントは、構内部分に塗装されている。既に運用されている自動運転バスはレベル2の段階にあり、ハンドル、アクセル、ブレーキ等の走行や制御は自動で行い、状況により運転手による手動運転に切り替える。
 
自動運転のシステムは、慶應義塾大学SFC(同大学大学院政策・メディア研究科 大前学教授)が開発し、複数のシステムを搭載することで運行されている。主に4システム(高精度の地図搭載、GPSによる自己位置計測、LiDAR・カメラ等による障害物回避)からなり、これにターゲットラインペイントが加わる。
 
ターゲットラインペイントは、NPICが開発したLiDAR(自動運転用のセンサー)が認識できる特許申請中の特殊塗料。走行経路に塗装することで、塗装されたペイントを車両のセンサーで認識し、自己位置の測定を行える。自動運転における利点として、導入コストやメンテナンスコストの削減が見込めるほか、山林やビル等によりGPSが入りにくい場所でも、塗装されたペイントを認識させて走行できる点にある。また、目視ではアスファルトと同化しやすい色のため、白線等の路面標示と誤認しづらく、安全面にも配慮している。調色も通常の道路用塗料と変わらず可能としている。


破線部分が「ターゲットラインペイント」施工箇所

 

コスト面では、磁気マーカー等に比べ導入で半分、維持費も5分の1から10分の1を想定している。施工は、通常の舗装用の塗装と変わらない。なお、改修の時期に関しては、人の目やセンサー等を考慮して、今後の実証実験を経て検討していく。今回の慶應義塾大学SFCの事例では、車両の自己位置精度の信頼性を高める補助的な役割を担った。一方、長崎県対馬市における同製品の実証実験(対馬市・明治大学・知財戦略機構自動運転社会総合研究所・シダックスが開発中の自動運転システム)では、自動運転のメインシステムとして提供され、対馬市の公道に塗装されたラインに沿って車が自動走行を行った。
 
自動運転分野は今後も有望だ。国土交通省と経済産業省の共同設置による「自動走行ビジネス検討会」では、2025年度頃までにレベル4のサービスを40カ所以上で実施するとの目標を掲げている。また、バスの自動運転については、運行会社は、ドライバー不足や事故率の低減を期待して積極的に開発に協力している背景がある。ターゲットラインペイントの応用例は幅広く、「現在もいくつか進めている案件がある」とNPIC担当者は話す。