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日本ペイントHD 、中期経営計画の進捗発表

2022.05.07

日本ペイントホールディングスは2021‐2023中期経営計画の進捗について、3月16日午後1時30分からオンラインで発表した。共同社長体制、売上収益、営業利益、2023年営業利益目標について説明があった。上場企業としては独自の共同社長体制については、判断等のスピードで懸念を示す向きもあったが、実際には多くのコーポレートアクションを実行。パートナー企業の自律的成長を加速させながら、同時に塗料・周辺事業でのM&Aによる成長も積極的に志向した。さらに、小さな本社を志向し、持株会社の役割明確化やガバナンス強化と併せ、持続的成長基盤を構築したという。

売上収益は、コロナ禍が継続する中でも高い成長を達成。2021年は販売数量の増加、価格・ミックスの改善に加え、為替・M&Aなどにより大幅な増収を達成した。2022年では、引き続き自律的成長およびM&A寄与により前年比20%増の1億2000万円を見込んでいる。また、中期経営計画CAGR(年平均成長率)目標である1兆1000億円は1年前倒しで達成できる見通しとしている。

営業利益では、2021年は原材料価格の高騰、サプライチェーンの混乱にも関わらず、インドネシア事業の貢献や価格転嫁、本社費用の当初想定比での大幅な見直しにより、一過性費用を除したベースでは実質増益を達成。2022年については増収寄与とマージン改善、M&Aによるガイダンス達成を想定し、1千億円超えの1150億円を見込んでいる。2023年営業利益目標は、各地で堅調な塗料需要およびシェア向上による自律的成長に加え、価格転嫁のさらなる進展、新たなM&Aの貢献などで中期経営計画3年目の営業利益目標1400億円は十分視野にあるとする。

同社では、以上についてアセット・アセンブラーとしての強さを「見える化」した良い例としている。これは、同社の経営ミッションであるMSV(株主価値最大化)を実現するために、目指す姿として、より小さな本社のもと、各パートナー企業の自律性を強く求め、魅力的な市場である塗料・周辺分野に特化したM&Aを積み上げていくことで、安全に高い成長を遂げる経営モデルだという。

同社が目指すアセット・アセンブラーを構成する強みについて、次の点を挙げている。
 ①巨大な市場規模を誇る塗料・周辺分野に特化しており、そこは巨大でありながら成長が期待できる市場であると同時に、当社が深く熟知している市場。
 ②塗料・周辺市場はローリスク・グッドリターンである。爆発的な成長は期待できないかも知れないが、利益・キャッシュ創出力においてある程度の確実性が見込まれる市場と考えており、だからこそM&Aにも適している。
 ③日本円をベースとする強み。低金利に加え、通貨の安定性、日本の金融機関から強力な支援を受けられる点は、世界の競合他社にはない強みである。
 ④優秀なタレントやブランドの集合体がもたらす強み。単独でも強いものが、塗料・周辺分野に特化しているがゆえに想定以上のシナジーが期待できる。それは決して欧米型の標準化やコスト・カット・シナジーではないが、ローカル色の強い業界にあって各社の強みを最大限生かせるモデルと考えており、同社グループへの参画を希望する会社も増えてくると見込んでいる。
 ⑤独立社外取締役が過半数を占める、先進的かつ実質を伴うガバナンスを構築している。そして、取締役会が一致団結してMSVの実現という明確な判断軸を有しているのは、MSVの考え方自体の強靭さと併せて、同社の強みを際立たせている。
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同社では、日本事業について、自動車用の比率が高く、2020年から2021年にコロナ禍や半導体不足に伴う顧客の生産減が売上減少、固定費負担の上昇となり、さらに原材料価格の上昇が追い打ちをかける厳しい状況となっているとした。企業努力を超えたところでは顧客の理解を得ながら値上げせざるを得ず、実際に2021年後半から順次値上げを実施している。自動車も最終需要は強いと認識しており、今後半導体不足などの解消に伴って顧客メーカーの生産が回復すれば、売上回復も十分に可能と見ている。この自動車用事業では、顧客生産の回復に加えて、今後、技術力を生かした環境対応で差別化を進めていく。特に顧客サイドでカーボンニュートラルに向けた動きが加速する中、塗料工程におけるVOC排出を減らすべく、省工程・低温焼付型塗料の開発や環境負荷の少ないフィルム事業などを進めていく計画である。このフィルムに関する技術は、建築用などの他の分野でも応用が効くものと考えている。

グローバルにおいては、塗料周辺事業を進展させる。グローバルにはSAF(密封剤・接着剤・充填剤)、CC(建設化学品)はともに巨大な市場であるほか、塗料と同様に、建築需要に伴う市場成長が見込まれる。設備投資の少ないブランドビジネスでもあり、塗料の販売網とも共通事項が多いことから、非常に有望な市場と見込んでいる。塗料周辺事業もゼロからではなく、当初はDuluxGroup社の買収に伴い、「Selleys」という高収益な接着剤ブランドを取得したことからスタート。それをNIPSEAのアジア販売網で展開することで、それまで赤字だったアジア事業が黒字転換するなど、さまざまな経験を積み上げてきている。こうした経験を踏まえ、2021年3月にマレーシアのVital Technical社を買収し、買収後に業績を大幅に伸ばしている。また、トルコのBetek Boya社では従来建材事業を手掛けており、高い市場シェアと高いマージンを有している。今般のCromology社、JUB社の買収に伴い、Betek Boya社のETICS(断熱材)などを欧州で展開できないか検討している。