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「マプリィ塗装」対談、塗装現場にDXの波を 

3次元データ計測アプリ「マプリィ塗装」は、ブラスト施工技術研究会の小寺健史会長(極東メタリコン工業専務)の呼びかけで、東海塗装(奈良間剛社長)・建設塗装工業(相澤文也社長)が協力、林業で活用されていたアプリの制作会社マプリィ(山口圭司社長)と提携し、開発に至った。さらに、全国に販売ルートを持つ大塚刷毛製造(脇伸一郎社長)が昨年秋に販売を開始している。「マプリィ塗装」は、元々林業で活用されていたアプリを塗装の現場向けに改良出来ないか、という発想のもとに生まれたという。そこで開発に関わる東海塗装の奈良間剛社長と、販売を担当する大塚刷毛製造の高吉晃氏に業界のDX、3次元データ計測アプリ「マプリィ」についての意見、今後の展開を聞いた。

東海塗装 代表取締役社長 奈良間 剛氏(左)=大塚刷毛製造 営業本部 マーケティング二部MKT2課 係長 高吉 晃氏(右)

サブスクアプリで測量を効率化

-両社の企業紹介、強みについて一言お願いします。
奈良間:東海塗装は創業から152年を迎え、創業時と変わらないパイオニアスピリットで、時代のニーズに対応した技術提案、サービスの創造を常に発信しております。顧客に寄りそった真摯な姿勢と積み上げたノウハウを武器に、進化し続けている会社です。

高吉:大塚刷毛製造は、大正3年創業の塗装用刷毛・ローラーの専門メーカーで今年110周年を迎えました。全国に販売網を持つ専門商社でもあり、ユーザー様とも深く関われることが当社の強みです。

-塗料・塗装業界全体のDX取組みについてはどのように捉えていますか。

奈良間:塗装業界としてのDXは、非常に受け身で遅いと感じています。しかしコロナ禍をきっかけに時代が急激に動き、置いていかれないためには、働き方改革やサステナブル経営を念頭に置いたITの活用は不可欠です。各業界がDXの取組みを行っている現在、 塗装業として独自の運用できるDXにスピード感を持って取り組む必要性があるという思いがありました。

高吉:
当社の商材で、IT関連のものはまだまだ少ないと思います。市場では写真管理のスマホ・タブレットのアプリが販売されており、黒板付きの現場写真を撮影できる事が特徴で、そこから徐々に共有機能のものが増えているという印象です。

-遅れている原因は、何だと思いますか

奈良間:手間が増えるという認識が強いと思います。現場は未だに、見て覚えるという文化が根付いており、マニュアル化すら出来ていないのが現状です。昔のままのやり方という古い文化が、強く影響しているとも言えます。

高吉:
新しいITやデジタル商材は開発会社からユーザーへ直接販売されるケースが多いと思います。我々商社はこのような商材に関わりづらかったというのも現状としてあります。今回のように、皆様から声をかけていただいた事で参入できた分野でもあります。

-測量アプリ「マプリィ塗装」開発のきっかけは何ですか。

奈良間:建設DXが話題になる中、国交省が取り組むPLATEAU(プラトー)など、3Dデータの活用を塗装業界でも運用できないかと考えました。

-市場の反応はどうでしょうか。また、現場ではどのように活用されていますか。

高吉:昨年の秋に販売を開始し、各地のマルテーフェアや展示会で紹介しています。デモの結果も好評で契約数も伸びています。使い勝手の良さが口コミやSNSで広がればさらに契約数は伸びると思います。現場ではおもに、塗装面積の測量に活用されています。

奈良間:
何度も立ち入りにくい場所や、お互いに確認し合えるツールが必要とされる現場に適しています。

マプリィ塗装をiphoneで使用するイメージ

-具体的な活用事例等、ございましたらお聞かせ下さい。
奈良間:足場や塗装箇所の確認など、複数人で測定しなければならないものが一人でも測定できる利点があります。点群データの3D化で、より分かりやすい現場資料となります。

高吉:
塗装面積全体を測量するだけでなく、保存したスキャンデータを呼び出して、測り忘れた時に活用したり、現場でスキャンだけして事務所に戻ってから、見積りしながら3Dデータから測量したりしているようです。

外壁計測機能と面積除去機能

-今後は特にどういった企業に向け、どのように活用されることを期待しますか。
奈良間:同じ現場に行かなくてもデータを用いて後で測れるというメリットを活かし、幅を測るものに関しては広く活用出来ると思います。また、3D化できる機能を使って、360度回転させて現場の状況を見ることも可能です。

高吉:
最終的には、塗装業界全体に広めていきたいと考えています。代理店様のご協力を得ながら、多くの方々に利用していただきたいと思います。

-今後の展開についてはいかがでしょうか。

奈良間:活用の範囲では積算に使ったり、状況を一緒に確認できるといったところになります。橋梁など塗装の元請会社のスタンダードツールになれるよう、現場でカスタマイズしていけるようなアプリに進化させていきたいです。 今後はCADに落とせる機能を発展させ、仮設足場など、図面として活用できる範囲を増やしていけたらと考えております。塗装業にこだわらず、足場やブラストなどでも活用できるよう総合的な機能も持たせていきたいです。

高吉:
発売後すぐに壁面モード機能を追加しましたが、今後も機能を拡充させていきたいと考えております。iphone、ipadプロシリーズに搭載されるLiDAR機能は、自動車の自動運転で開発が進んでいて、スマートフォン対応機種についても広がる可能性があると聞いておりますので、さらに利用ユーザーが広がっていくと思います。

-塗料・塗装業界に向けての展望を、一言お願いします。

奈良間:電子データを活用した現場として、図面や施工状況などの確認もペーパーレス化することで、先進的取組みをしている業界として見られるようになっていくことに繋げていきたいです。さらに、塗装業でデジタル化は難しいという概念をなくせるよう、最新の技術を塗装会社が活用できると伝えたいところです。若手技術者が働き方改革に準じた現場管理ができるよう、魅力ある取組みにしていきたいと思います。

高吉:
マプリィのもう1つの特徴としてマップを利用した共有機能がありますが、協力会社様等、グループで使用する事で活かされる機能です。どのように共有したら機能を活かせるかが重要になってくると思います。施工店様だけでなく材料メーカー様など、関わりのある方々にも広く使用していただく事で、共有機能を活かした展開を目指したいと思います。

-ありがとうございました。
<全文は『塗料報知』2024年4月17日号でご覧ください>