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【インタビュー】シェル、ヤン・ファン・オフトロプ氏


溶剤供給のリーディングプレイヤーであるシェルケミカルズ。ニーズの変化や環境規制が強まる中、シェルグループのアムステルダム研究所で化学品全般の用途開発や製造に関する研究を続けるヤン・ファン・オフトロプ氏(Shell Global Solutions International B.V.・Researcher)に、環境対策に着目した溶剤の研究開発について聞いた。

環境規制に一つの選択 GTL溶剤。溶剤用途、建築分野に期待

―環境規制が強まっています。これに対応した製品の開発は。

天然ガスを原料としたGTL(Gas to Liquids)溶剤を展開しており、初めは北米や欧州で使用されていたが、他の地域にも広がりつつある。GTL溶剤は、イソパラフィンとノルマルパラフィンを主成分とする混合物であり、芳香族やナフテンの含有量が少ないため、高生分解性・低環境毒性・低光化学反応性などの特徴を有する環境負荷の少ない高純度で低臭気な製品である。カタールのGTLプラントは日産14万バレルの生産能力を備えている。

―塗料用途としても採用され、石油由来の溶剤から代替物となり得る製品なのでしょうか。

欧州などでは既に塗料メーカーがGTL溶剤を使用しているものの、我々は単純に芳香族系溶剤などを代替できる製品とは考えてはいない。溶剤系塗料を環境規制に適応させるための、一つの選択肢であると考えている。シェルもそうだが、お客様は環境負荷を少なくした製品の開発に注力をしている。GTL溶剤はそのトレンドに対する役割を担える。

―塗料用途では、どのような製品開発アプローチを進めていますか。

お客様とのコミュニケーションが重要だと考えている。今回の来日もそれが目的であり、お客様のニーズを把握した上で経済性も考慮しながら、製品の改良を行っている。我々は溶剤のプロフェッショナルだが、塗料樹脂等の専門家ではないので、お客様や研究機関との情報交換を行っている。例えば、欧州で使われている塗料樹脂とGTL溶剤との溶解性、塗料溶剤の種類の変更や使用量削減、GTL溶剤が持つユニークな特性がもたらす樹脂の低粘度化などに対する我々の知見を、役立てていただいている。

―溶剤を使用する製品の開発もスピードが求められる時代となり、どのような支援を行っていますか。

技術・開発など現場担当者向けに溶剤配合計算用ソフトウェア「BlendPro Live」をお客様に提供している。このソフトウェアは、混合溶剤と樹脂の溶解性をシミュレーションするだけでなく、溶剤性能と経済性の最適化、揮発性有機化合物(VOC)や有害性大気汚染物質(HAP)などの環境特性、を同時に計算することができる。お客様の開発・研究作業の時間を短縮できるサポートツールとして利用してもらっている。

―溶剤用途は4割弱が塗料・コーティング関連とも言われておりますが、次なる有望な用途は。

建築分野が次なる用途である。例えば、シリコーンシーラントのような、高粘度材料が挙げられる。その他にも、消泡剤、印刷インキ、コンクリート用離型剤、産業用洗浄剤などが挙げられるが、GTL溶剤の製品構成次第で可能性はさらに広がる。

―ありがとございました。