【インタビュー】Sotas 代表取締役 吉元裕樹

Sotas 代表取締役吉元裕樹氏
激化する国際規制や不透明な経済安保リスクにより、日本の化学産業はかつてない転換期に立たされている。もはや規模の優劣だけでは競争力が生み出せない局面において、命運を分けるのは、現場に散在するデータを経営判断へ即座に繋げる仕組みである。今回、Sotas代表取締役の吉元裕樹氏のインタビューを実施。データの孤立という日本企業の弱点をどう克服し、官民連携の基盤により情報管理と資源循環をどう促すのか、同社の挑戦を聞いた。
化学産業の情報基盤目指す
―10億円という大規模な資金調達を実施されました。
今回の調達は、グロービス・キャピタル・パートナーズ様をリード投資家とし、新たに化学専門商社のツカサペトコ様や弘栄貿易様を迎えたことで実現しました 。現在、化学産業はイラン情勢、米中対立に伴う経済安全保障のリスクや、PFAS規制をはじめとする世界的な化学物質規制の強化、脱炭素社会への移行など、極めて不確実な経営環境にあります 。
こうした転換期において、企業の競争力を左右するのは設備の規模だけではありません。分散するデータを統合し、即座にリスクを可視化して経営判断へと接続する「意思決定の質と速度」です。その課題を解決する手段として、当社の取組みが評価されたものと考えています。
私自身、化学メーカーでの経験がありますが、日本企業の現場は、優秀な人材が揃っていると感じています。さらに、経営判断のスピードが高まれば、化学産業が再び日本を牽引し、日本全体の浮上にも繋がると本気で考えています。そのためには、化学産業の持つ技術力と現場力を最大化するために、データは「経営インフラ」と言う考えのもと、その活用を加速する必要があります。ただし現状では、人事等の情報は集約が進んでいると思いますが、現場のデータは部門別に保持され、十分に共有されていないのが実情です。
―資金調達で投資していきたい分野は。
今回の資金調達により、プロダクト開発の強化やデータ基盤の高度化、そしてこれらを担う人材に充て、情報連携の社会実装を加速させます。特に人材面では、経営層の拡充とAI人材を強固にしていきたいと考えています。2年後の組織図を描いた際に、ファイナンスやAIスペシャリストは必須です。また、今期で社員数を80人ぐらいまで増やす予定です。
―貴社主力の「Sotas化学調査」について詳しくお聞かせください。
化学業界では、年々厳格化する規制に対し、サプライチェーン全体での化学物質情報の共有が義務化されつつあります。しかし、依然として現場の業務負荷は多く、効率化が急務です。本サービスは、こうした複雑な化学物質調査を一元管理し、業務を効率化するクラウドサービスとなります。
―今期で貴社サービスは、黒字化が見えていると聞いております。
月次平均15%の伸び率となっており、サービスは現在約150社の企業から採用されており、企業規模大小かかわらず導入いただいております。塗料メーカー様からは、特にSDSの作成や、階層構造の現場に則した混合品管理、各法令の閾値の自動計算等に、評価をいただいています。コスト面でも専門の担当者の人件費に比べ、大幅な削減効果が見込まれます。
Eコマース事業も展開
―貴社は、官民で進められている「CMP(製品含有化学物質・資源循環情報プラットフォーム)」の検討や実証にも参画されています 。
当社はCMPのアプリケーションベンダーの一社としてNEDO事業に採択されており、業界横断で活用される情報基盤の構築を目指しています。具体的には、製品に含有の化学物質情報を起点として、化学品メーカーから素材、部品、加工・塗装、そしてOEMに至るサプライチェーン全体で情報を連携させる仕組みです。
CMPのプロジェクトは予定より早く進んでおり、当社としても官民のプロジェクトに参画することで、アプリの信用度が高められたと自負しています。
―CMPは、「資源循環」も見据えていますが、その点での課題についてはいかがでしょうか。
リサイクルは、どこから出た素材なのか不明確という課題があります。そのため、リサイクル品を使用できない現状があります。重要なのは、製造から販売までを担う「動脈産業」の情報を押さえることです。出を押さえることで、リサイクルを担う「静脈産業」の情報を結びつけることができます。
現在、CMPにおいて製品の出自や成分データを可視化し、将来的にそれをリサイクル情報伝達プラットフォームへと繋ぐ検討が進んでいます。これまでに蓄積してきた当社の知見と実運用のノウハウをCMPに有機的に結合させることで、資源循環の社会実装をリードしていきたいと考えています。
―最後に、今後の展望について教えてください。
日本の化学産業は世界トップクラスの技術を持っていますが、情報の扱い方だけが「最後のピース」として残されています。そのため、当社は「化学産業の情報基盤」になることが目標です。事業としては、直近2年では、年間経常収益(ARR)50億円という展望を掲げています。
また、海外展開のために動き出しています。さらには、素材とユーザーを繋げるEコマースも展開する予定です。ただし、化学産業特有の商習慣を尊重しながらと考えており、商社と一緒になって計画しています。現場に自然に溶け込むサービスを今後も展開していきます。
―ありがとうございました。
代表取締役吉元裕樹氏:趣味:IR閲覧、町中華巡り、ドライブ、ゴルフ 座右の銘:知行合一 好きな色:白、エンジ、セルリアンブルー
