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画家:大森 翠さんの多彩な画業を偲ぶ

千里山コミュニティ協議会(大阪府吹田市)の主催する講座「~千里山この人~『大森 翠 の世界』が、12月4日午後2時から千里山コミュニティセンター多目的ホールで開催された。当日約60人が聴講し、大学や病院の壁を彩る抽象画や、国語教科書「きつねの窓」の挿絵など千里山出身の故大森翠さんの多彩な画業が紹介された。また講座開催に先立って、11月21日~30日、同センター内ギャラリーでパネル展示が行われた。

大森翠さんは、大信ペイント創業者大森豊吉氏の次女で、千里山で1945年4月12日に誕生し、2021年に逝去された。塗料・塗装業界との関連の活動では、かつての日本塗料倶楽部、後の塗料協会における絵画展で25年にわたり審査委員長を務められ、文化面で貢献された。

神戸の個展で展示された抽象画の大作①

 

神戸の個展で展示された抽象画の大作②

抽象画の画家として評価される
講座ではこれまでの業績を振り返り、まず抽象画の画家として高く評価されていることが紹介された。フランスの色彩画家として著名な二コラ・ド・スタールから大きな影響を受け、上品で美しい色彩は観る人の心を和ませてくれると高く評価されている。
一般的に多くの人は抽象作品に抵抗があり「具象絵画はわかるけれど、抽象画はわからない」という意見が多い。それに対して大森さんは、「具象画は描いてあるものがリンゴか風景かがわかるだけで、それは絵画が判ることとは関係ない」と否定的だった。抽象画は絵画の世界に入り込んで「元気をもらえる絵」とか「世界が広がる絵」とか「踊りたくなる」とか「苦しくて泣きたくなる」とかを感じてもらうことが大切である。例えばショパンの曲、着物の柄、小説、建築も『感じる』ことが大切だとコメントされていた。

千里山コミュニティセンターのギャラリーで展示された「南仏風景」

 

同「亜熱帯ー'14」


油絵以外のジャンルでも活躍
大森さんは水彩画の素描力でも非常に高い技術を持っており、繊細な筆のタッチが特長である。「何気ない構図でも非常に考え抜かれている」との説明があった。また油彩の作品の他に、絵本や教科書の挿絵を描き、そのうちのいくつかは数十年のロングセラーになっている。「きつねの窓」は小学6年生の国語の教科書に採用された。

水彩画でも卓越した素描の技術力を発揮。

挿絵の上部は「きつねの窓」、下部は「おおきな さくらのきのしたで」


プロフィールは、1945年に大阪府吹田市千里山で誕生。京都市立美術大学で洋画を学び、卒業後、企業でテキスタイルデザイン、テレビコマーシャル制作に従事。フランス政府の給費留学生として国立ニース美術学校、国立パリ高等美術学校で学んだ。帰国後は、抽象画、具象画の画家として活躍した。2017年京都市京セラ美術館に大作6点を収蔵。その他デルファンゴ美術館・関西大学・大阪大学・京都大学などに収蔵。病院や大学に飾られた作品は、患者たちの心を癒し、また学生たちに安らぎの空間を提供している。