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注目企業!サステナブル社会に貢献する塗料原材料

塗料・塗装業界において現在、サステナブルな業界構築が課題となっている。とりわけ、環境配慮に関しては、「塗料製造~塗膜形成」全過程を考慮した、CO2やVOC排出削減に加え、化学物質規制への対応等、一段とスピードを上げる必要性が高まっている。また、機能性や生産性の向上、安定供給の材料もサステナブルな業界の構築には必要な要素であり、塗料・塗装業界は、これらの原材料に期待を寄せている。そこで、暑中特集号の特別企画として塗料原材料を取り上げ、樹脂や添加剤等について紹介。サステナブル業界構築に資する最新情報をお届けする。

独自技術でサステナブル<互応化学工業>

清涼飲料水やミネラルウォーターには欠かせず、近年ではコーヒーやビールなどにも用途が拡がっているペットボトル。この構成樹脂であるポリエステル樹脂(PET:ポリエチレンテレフタレート)は透明性、耐水性、バリア性、耐久性などが特徴であるが、水溶性のポリエステル樹脂があることはあまり知られていない。

同社は独自技術により乳化剤や活性剤を使用せずに水溶化できる「水溶性ポリエステル樹脂 プラスコート」を開発し、製造、販売している。PET系繊維の硬仕上げ加工剤から始まり、PET系食品包装フィルムの易接着コート剤として国内外へ用途拡大してきた中で、PET素材・アルミ等の金属への密着性が優れていることから、近年では水系インクや水系塗料への応用ニーズの高まりとともに、サステナブル社会に貢献する観点から新規樹脂コート剤を開発した。

水溶性ポリエステル樹脂 「プラスコート」の樹脂状態

 

プラスコートの溶液状態


▽GX‐1451・GX‐1452・GX‐1453・GX‐1454
原料の一部を石油由来からバイオマス由来に置き換えた水系ポリエステル樹脂コート剤。バイオマス度70%のGX‐1451、40%のGX‐1452(耐水性グレード)、GX‐1453(完全水系グレード)、およびGX‐1454(完全水系グレード、高酸価)を開発した。

▽GX‐1449・GX‐1450
一定の条件下で微生物により分解される、生分解性の水系ポリエステル樹脂コート剤。GX‐1449(スルホン酸ソーダ基にて水溶化しているタイプ)、GX‐1450(高酸価、反応性グレード)はいずれも完全水系グレードとして開発した。環境に配慮した低VOCの設計である。

▽GX‐1445・GX‐1446・GX‐1447
PETボトル由来のリサイクル原料を樹脂原料の50wt%使用した水系ポリエステル樹脂コート剤。環境に配慮した低VOCの設計で、透明性に優れたコーティング皮膜を形成することが可能。完全水系グレード(GX‐1445・GX‐1446)、および水系溶剤を10%併用した耐水性グレード(GX‐1447)を開発した。
▽GX‐1448

紙包材用水系ポリエステル樹脂コート剤。紙基材にコーティングすることで優れた耐透湿性を示す(220g/㎡・dayカップ法JIS Z0208 40℃、90%RH,1day)ことが特徴である。食品包装材に対して脱プラスチックの需要、関心は高く、「FDA§176.170(紙および板紙の成分)」、「食品用器具・容器包装のポジティブリスト」に収載された原料のみで構成し、それらの要求に対応している。

℡0774・46・7776

良好な分散状態を維持 無溶剤塗料に適した材料も <共栄社化学>

共栄社化学はお客様と共に地球環境の保全と脱炭素社会の実現に貢献するため、有機溶剤の使用量を削減できる水性塗料や無溶剤型塗料に適した添加剤の開発、販売に力を入れている。

水性塗料やエマルジョン系塗料の製造時に分散性が問題になる場合や、塗料保管時に粒子が凝集、沈降し、塗膜の意匠性や機能不良の問題が起こる場合がしばしばある。

同社では水性塗料用分散剤として「フローレン」シリーズを展開しており、「フローレンGW‐1500」「フローレンGW‐1640」を上市している。同製品は、高分子ポリマータイプの分散剤であり、塗料中の粒子表面の湿潤性を向上させつつ、粒子表面に吸着することで、分散安定化をもたらす立体障害層を形成する。このため、良好な分散状態が維持され、粒子の分散改善と凝集、沈降防止改善に効果を発揮する。

また、同製品は粒子表面への吸着基としてカルボキシル基と芳香環を有しているため、フタロシアニン等の芳香環を持つ有機顔料表面へも効率的に吸着し、高い分散安定性を発現させることができる。

さらに、有機溶剤を使用しない無溶剤型塗料は、高粘度になりやすいため、泡が抜けにくくなる。当社では無溶剤型塗料に適した有機溶剤を使用しない消泡剤を多数ラインアップしている。代表的な製品としては、「フローレンAC‐326F」、「フローレンAC‐2300C」がある。昨年度上市した新製品の「フローレンAC‐380」も、溶剤を含まない有効成分100%で、無溶剤型塗料のような高粘度の塗料の消泡に大変優れている。

同製品は、屈折率を制御することで塗料との屈折率差を減少させ、強力な消泡性を維持したまま、より塗膜ヘイズが出にくい設計にしている。そのためクリヤーコーティングへも適用可能となっており、幅広い用途に展開できる製品となっている。当社では分散剤、消泡剤以外にも水性塗料や無溶剤型塗料に適した揺変剤、レベリング剤なども展開しており、持続可能な社会の実現のために、これからも地球環境の保全(環境負荷の低減)、脱炭素社会に向けた製品開発を行っていく。

℡06・6251・9433

高漆黒カーボンブラックを水に分散/分散材なし㊧とフローレンGW‐1500㊨(顔料に対して50%添加)

 

無溶剤エポキシ塗料の消泡剤使用例/無添加㊧とフローレンAC‐380(0.5%添加)

サステナブル社会に向けて シリカのプラント増設と高性能艶消し展開 <トクヤマ>

トクヤマの乾式シリカ「レオロシール」は、塗料や接着剤、インキの増粘・チクソ剤として使用されている。山口県周南市の徳山工場をメインに、中国の100%出資子会社の徳山化工(浙江)との2拠点で、乾式シリカの親水グレード並びに疎水グレードを生産している。2050年度カーボンニュートラルの実現を目指し、徳山工場ではCO2排出量の削減への一環として、自家発電所の燃料へのバイオマスの活用を積極的に推進している。また、乾式シリカの用途も広がりをみせ、風力発電用途などに使用される接着剤や高機能塗料への需要が拡大。中国工場では、乾式シリカ疎水グレードの生産ラインの増設を決定し、2023年8月の営業運転開始を予定している。

中国工場で生産を行う高性能艶消しシリカ「レオロシール FMシリーズ」は、トクヤマが有する乾式シリカ製造技術、および微粉砕分級技術を応用して製造した親水性シリカである。湿式シリカベースの艶消しシリカと比較して、高い艶消し効果、透明性、漆黒性、シルキーな触感、易分散性の特徴を有している。この利点を生かし、自動車・家電・建材・合成皮革など、生活の様々な分野で高度の意匠性を持った製品への展開が期待されており、水性・油性・合成皮革・UV・アンチグレアなど様々な種類の塗料にも用途が広がっている。

一般的な湿式シリカは、その製法上シリカ内部に水を多く含みやすく、塗料に使用される樹脂との屈折率差が大きくなることによって透明性が低下することがある。一方で、FMシリーズの屈折率は樹脂の屈折率に近く、湿式シリカを添加した場合よりも透明性に優れるという特徴を持つ。その結果、合成皮革用塗料では漆黒性が際立ち、更にシルキーな触感で高級感のある合成皮革が得られる。また、一般の湿式シリカに比べて緩やかな凝集構造を有しているため、塗料中でのディスパー分散が容易であり、生産性の向上にも貢献できる。

トクヤマグループは、日本・中国で現地生産できる強みを生かし、市場の成長に合わせた生産体制の構築、顧客ニーズに合わせた製品開発を図っていく。ユーザーへの安定供給と技術サービスを一層強化することにより、サステナブルな社会の実現に貢献する。

℡03・5207・2532(機能性粉体営業部)

循環経済の取組み対応 <ビックケミー・ジャパン>

自然災害の甚大化やパンデミックに加え、人為的な破壊による生産・物流の停滞や環境悪化の中で、SDGsの目標達成の取組みやカーボンニュートラルの取組みを着実に進めることが求められている。BYKでは再生産可能原料を使用した添加剤、塗料化工程での効率化を考慮した添加剤の開発に注力している。

 



水系では再生産可能原料を用いた消泡剤BYK‐1740が、植物由来の材料で設計される塗料・インキに最適である。植物由来原料によりバイオ比率100%で、従来の鉱物油系の消泡剤を置き換えることができる。また生分解性を示すので、より廃棄時の負荷が少ない。もちろん廃棄を推奨するものではなく、廃棄は少ない方が環境負荷は少ないのは言うまでもないことである。

なお、バイオ比率は欧州委員会の定義に従い、「地層に埋もれたまたは 化石化された材料を除外し、全体的あるいは部分的に生物学的起源の材料に由来する」有機炭素の全有機炭素量に占める割合で記述している。ASTMD6866に準拠した測定により算出、表示している。

また、バイオ比率65%の水系消泡剤BYK‐1745は、接着剤や各種シーラントに効果的である。特に開発に当たっては食品接触関連の各種法令への適応を念頭に置いている。詳しくはBYKホームページで公開している情報をご覧いただきたい。

さらに水系のポリシロキサン系消泡剤では、撹拌時間が短くてもハジキ等の不具合なく、十分な消泡効果を示すのがBYK‐092である。塗料化工程で撹拌強度が弱い条件で混合可能、すなわち投入エネルギー量が少なくてすむ利点がある。一方、重防食塗料で進められるエポキシ系の水系化では、厚膜・高粘度での脱泡・消泡が求められてきている。ポリシロキサン系消泡剤のBYK‐1789は、こうした要請に応えるものである。

塗膜の表面特性の向上の視点では、再生産可能原料を用いたワックス系添加剤が注目される。微生物を用いて合成したCERAFLOUR 1000、同1001、同1002は固形粉状で、バイオ比率97%以上。塗膜の表面保護とともに意匠の創出をもたらす添加剤である。

AQUACER 570はヒマワリ油を変性したバイオ比率100%の、エコラベル表示品である。塗膜に撥水効果や耐スリキズ効果をもたらし、木工・紙をはじめとした各種水系塗料に適用できる。 AQUACER 1540はカルナバワックスが主成分で、バイオ比率92%、缶用塗料をはじめとした水系塗料のスリップ性や耐スリキズ性の向上など表面保護に有効である。今後も機能向上と循環経済に貢献できるよう努めていきたいとしている。

℡03・6457・5501