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建設DX元年、塗装ロボットとドローンの可能性

建設産業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、最も難しく遅れている業種とみなされてきた。しかし、昨今の長時間労働是正を目的した規制、間近に迫る建設技能者の高齢化に伴う大量離職問題、さらにはコロナ禍による感染拡大防止策と建設テックへ振り向ける投資は高まってきている。実際に大林組や清水建設では現行の中期経営計画で200億円前後を研究開発投資に当てるとされている。オープンイノベーションはゼネコンや建築事業者の得意分野。共同開発、コンソーシアム化が進む。

ロボットに技能伝承

建設ロボットの開発は、バブル景気の時代に人手不足解消を背景にブームになっていたが、その後、バブル崩壊とともに投資余力がなくなり、建設ロボットの開発は進んでいなかった。しかし、近年深刻となる人手不足を背景に第2次建設ロボット開発が進む。また、コロナ禍の感染症対策なども同時に行う必要も迫られここへ来て、別な要因も浮上している。

鹿島が推進している「鹿島スマート生産」では、〝作業の半分はロボット〟をコアコンセプトの一つに位置付け、繰り返しや苦渋を伴う作業、自動化により効率や品質にメリットが得られる作業などを対象に、自動化・ロボット化を進めている。

塗装分野でも、室内での壁面吹付塗装作業を自動化に挑戦。鹿島と、竹延が手を組み、壁面吹付塗装ロボットを共同開発、兵庫県内の建築現場におけるALC壁(475㎡)の部分塗装に実適用した。その結果、下地処理や養生などを含む塗装作業全体で、従来の人による作業が4・8人/日であることに対し、ロボットでは3・2人/日と、約3割の削減を実現し、塗装品質についても熟練塗装工と同等の水準を確保したという。

同ロボットの特長は、離隔センサーにより壁との距離を一定に保ちつつ、移動しながら吹付ノズルを上下して壁面を塗装。一定速度、一定角度で塗料の吹付ノズルを動かすことにより、1回の吹付で膜厚を確保した上で、1時間あたり110㎡以上の壁面を塗装可能としている。吹付塗装の機材には汎用品を採用し、部品交換などの保守を容易化。開発期間の短縮、製作コストの抑制、構造の簡素化、操作の簡略化などを実現している。端部など、ロボットによる塗装の難易度が高い部位については、従来通り人が作業する。

開発に当たっては、竹延が従来から取り組んでいた、熟練塗装工が持つ感覚的な技の数値化やマニュアル化などのノウハウを活用。熟練塗装工と同等の塗装品質を確保した。今後、同ロボットの全国の建築現場への適用を推進し、人とロボットの協働による吹付塗装作業のノウハウを蓄積するとともに、現場への適応性を高めて、ロボットによる施工範囲の拡大を図る。共同開発した竹延の竹延幸雄社長は「建築塗装分野の生産性や働き方を抜本的に見直すためにも、人への技能伝承だけでなく、ロボットへの技能伝承を同時に進めていくべき」という信念を持つ。

国内の労働人口が伸びない中、一時的な雇用環境の上下はあるが、人手不足は長期にわたる問題である。前述のように難易度が高く、高度の仕上げが求められる、人の技術力が優位にある。人とロボットの役割分担を明確にする傾向も見られそうだ。

検査精度で課題あり、ドローン開発

近年、建築分野でのドローンは、まず外壁調査分野に活用されている。既に、サービス展開が進む戸建塗り替え業者も存在するが、技術的にも市場性においても現在は、発展途上にある。ドローン活用の優位性をおさらいすれば、「手の届かない、見えない場所へのアクセシビリティ」、「地上と同じ目線での画像取得」、「変状・損傷を迅速に把握可能なスクリーニング効果」が挙げられる。加えて、戸建塗り替えの現場では、施主への損傷箇所の見える化をすることで説得性が得られる。ただし、目視などによる人と比べると課題も多い。

日本建築ドローン協会(JADA)は、実建築物によるドローンを活用した外壁調査の実証実験で、打診検査、地上設置の赤外線装置法、ドローンでの赤外線装置法の3つの方法を用いて学校校舎の外壁面を調査した。それによれば、ドローンでの赤外線装置法の検出率は、打診検査に比べ、45・81%という結果だった。この結果の原因として同協会は、ドローンに搭載した赤外線装置による熱画像において、欠陥を判別できていない熱画像を観察するとシェーディングのような現象が発生し、検査結果に影響したと説明している。また、壁面の方位、検査開始時刻、対象建築物の立地や形状など、複数の要素が重なると検出結果に差異が発生すると言う。

課題に対して、打診との併用や建物の事前調査、撮影者と画像解析者を同一担当にするなどを挙げている。また、光沢や表面に凸凹のあるタイル壁面、剥離の検出は困難であるということもわかってきた。複合的な条件によって検出率に差異がでる現状であるが、建築ドローンを適用するには共同開発が欠かせない。日本建築ドローン協会では、日本建築防災協会、神戸大学とコンソーシアム組織を作り、研究開発を重ねる。この三者の役割として主に、日本建築ドローン協会が新ドローン、神戸大学がドローンに搭載できる赤外線装置の開発、日本建築防災協会が定期調査の方法をまとめていく。

一方、民間主導のコンソーシアムも登場し、建築検査学研究所と日本システムウエア、doの三者が、建築検査・調査に関する正しい知識・手法を全国に広げる「建築検査学コンソーシアム」を昨年設立している。同組織は、既存の外壁診断の調査データを活かし、AI活用した解析ソフトを開発、ソフトウェアで外壁診断を行い、正しい検査方法で普及活動を担う。