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変幻自在な塗膜の特性で、需要掘り起こしを

高い成長率を見込みにくい成熟産業。塗料・塗装産業の国内分野もその一つと見られている。しかし、最新技術でイノベーションを起こすことは可能である。そんな塗膜技術を二つ取り上げる。
 
一つは航空機用途だ。機体表面の摩擦抵抗を減らす塗膜技術として、サメ肌に似せた表面加工技術が登場した。サメ肌加工は、競泳用水着で水の抵抗を減らし、記録更新に結びついた。これを航空機に応用し、空気抵抗の低減により、低燃費、温室効果ガス排出抑制を実現した。塗料販売事業者の持つ塗膜形成技術が生かされ、1機当たり約2%の燃費改善を達成したと言う。一見小さな数字に思える。しかし、航空会社の機体保有数や飛行距離を考えると、大きな数字を意味する。
 
もう一つは自動車用途である。スプレー塗装で車体を保護するフィルム膜を形成する。塗装なのでグリルやホイールといった細部にも対応。さらに、膜上から塗装できるので、好みのカスタムペイントを実現できる。フィルム状の塗膜は剥がすことも可能で、車を売却する際に剥がせば、元のきれいな塗装面が現れる。このため下取り価格アップにもなる。
 
いずれも塗料・塗装の持つ、施工箇所への幅広い選択肢、細部への入り込み、その拡張性など、巧みに生かしている。他の表面処理にはない、変幻自在な特性に改めて着目すれば、掘り起こしの余地はまだまだ考えられる。大阪・関西万博の目玉である話題の〝空飛ぶクルマ〟も思い浮かぶ。
 
塗料・塗装の如く広がりある思考で、塗膜の如くしっかり技術を向上させていきたいものだ。