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 ロケット・フェアリング断熱塗料 6㎜の断熱塗膜採用

6㎜の断熱塗膜採用

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が、打ち上げロケットの衛星などを保護するフェアリングに塗る断熱塗料は6㎜もの厚さがあり、同機構内では塗膜のイメージをはるかに凌駕するそのぶ厚さから「塗布式の断熱材」と呼んでいるほどだ。

塗布式断熱材が塗られたフェアリング(JAXA提供)


シリコーンを主成分とした2液性の断熱材で、その中に熱伝導の低い材料を混ぜることで、約300℃もの空気加熱にも耐える高い断熱性能を発揮させている。スプレーによるフェアリングへの直接施工だ。

この塗布式の断熱材をフェアリングに塗っているのは日本の衛星打ち上げ用ロケットのうち、液体ロケットタイプのH―ⅡAとH―ⅡB。先端部で熱的に非常に厳しい箇所になるため白色にしている。なお、直近に開発した固体ロケットのイプシロンロケットは、シリコーン系のフォーム材の塗布方式に変更。現在開発中のH3も製造工程の簡略化の観点から、同じく貼付式の断熱材を適用の予定という。

しかしながら、「熱制御の観点では衛星の方がより厳しい環境にさらされるため、衛星ではこの塗布式の断熱材が使われる可能性がある」(担当者)とのことだ。

また、この塗布式の断熱材以外でも、H―ⅡAロケットには2段ロケットが宇宙空間を飛行している際に燃料の蒸発を抑えるため、入熱量をコントロールできる白色塗料を2段タンク表面(断熱材の外表面)に塗っているとのことだ。

※フェアリング=ロケットの最先端部に位置し、その中に搭載している衛星などを打ち上げの際の大きな音響や振動、大気中を飛行する際に生じる摩擦熱から守る役目を果たす。役目は卵の中身を守る殻と同じだが、軽くて丈夫で、かつ振動や熱に強い構造でなくてはならない。単純に殻の部分を厚く頑丈にするだけでは、フェアリングが重くなってロケットの打ち上げ能力が下がってしまう。そのため、頑丈で軽量なハニカムサンドイッチ構造を採用している。

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