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〈3〉コラム:建築塗装 社員教育ここが足りない!

1-3.小さな塗装屋を着実に成長させる「社員教育」について

〈3〉塗装店向け採用・教育の指南コラム

著者プロフィール:

日本建築塗装職人の会 会長 青木忠史
「日本を代表とする建築塗装店向けに展開する経営コンサルタント。
29歳の時、家業の建築塗装店を継ぎ、6,000万円超の借金をわずか3年で完済。そこから生まれた「地域密着型経営」、「職人直営専門店」の塗装店戦略を体系化し、コンサルタント業へ。これまで7,000件以上の塗装店経営者の経営相談を受け、700社以上の塗装店経営者へ直接経営指導してきた。

〈コラムの概要:著者インタビュー〉

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前回の「1-2.なぜ、塗装屋には一般社会の社員教育がマッチしないのか?」では、小さな塗装屋ほど事業を絞り込み、まずは「業務標準化マニュアル」を作成していくということが大切であるというお話をしました。

そこで今回は、さらに前進して、小さな塗装屋を着実に成長させるための「社員教育」について、具体的にお話をしてみたいと思います。

今回の内容は、

・お客様・協力業者との信頼関係を深めたい方
・仕事ができる社員を迎え入れたい方

には、参考になると思います。

早速、結論から申し上げますが、小さな塗装屋を着実に成長させる「社員教育」では、私が経験してきた限り以下の4点を教育していく必要があります。

1.塗装技術者の育成
2.社会人教育
3.書類作成等にかかわる事務作業
4.社会人としての基礎的なビジネススキル

これらを教育できれば、間違いなく小さな塗装屋さんは発展していくと断言できるでしょう。
では、それぞれを具体的に説明致しますね。

1.塗装技術を指導すること

塗装屋を成長させる「社員教育」の1つ目は、塗装屋の中心軸となる「塗装技術」を指導することです。
塗装技術者を育成するために、欠かせないのが「業務マニュアル」ですので、まずはそれを作成します。

そして、出来上がった「業務マニュアル」を元に、評価基準表(業務レディネス)を策定し、社員1人ひとりの習得度合いを確認していきながら、成長を促進していきます。

こちらの内容については、詳細は順次具体的にお伝えしますが、まずは、1番大事な「社員教育」となります。

2.社会人教育を行うこと

塗装屋を成長させる「社員教育」の2つ目は、社会人教育を行うことです。現実的には多くの塗装屋さんで、このようなことは行なわれていないのが現状です。

しかし、これからの時代は塗装屋でも経営が重要となってきますので、実施をしていく必要性があると感じてきています。また、以下の内容は、「職人の会式」で定めているものですが、一般的には新入社員の時に行うものですが、主に以下の3点を踏まえた社会人教育が必要です。

職業倫理観

「社会人教育」の中の1つ目は「職業倫理観」の教育となります。塗装業界に関わる全ての方が、「塗装業」が社会に対してどのような役割を担っているのか、また、その中で塗装技術者はどのような職業倫理観を持つ必要があるのかについてを指しています。

具体的には、「塗装業」とは、建物・建造物の耐久性を守り、人々の暮らしや生活を守ったり、喜びや楽しさを提供するという職業であり、普段の生活の中でも、1日の中で一度も塗装に触れないという日は無いほど身近に接しているのが「塗装」であり、広く社会に必要とされている職業であるという認識をまずは共有します。

その上で、塗装業に関わる私たちの正しい「生き方」「考え方」「仕事の仕方」が、「塗装技術者の職業倫理」でもあり、それらを指導していくということになります。

仕事観

「社会人教育」の中の2つ目は、「仕事観」の教育になります。ここでは、塗装業だけにとどまらず、社会人として、社会で大勢の方々と関わり仕事を行う上で、守らなければならない「生き方」や「姿勢」を示しています。

具体的には、内因的仕事観「自己成長や自己実現を目的と考える仕事観」・功利的仕事観「収入・肩書・地位等を目的と考える仕事観」・規範的仕事観「自分のためではなく、社会のためと考える仕事観」をバランスよく持ち、人生を通して、職業人として社会に貢献していくことを推奨しています。

人生観
「社会人教育」の中の3つ目は「人生観」です。人生観とは、自分は、どのような人生を生きていきたいかを考えていくことです。

具体的には、以下の指針について、年代ごとにどうなっていたいかを考えていき、そのために取るべき考え方や行動様式などをあらかじめ考え、総括的に自分はどのような人生を生きていきたいかを戦略的に決定していくことから、作り上げていくものが「人生観」です。

・専門領域
・健康
・家族
・人間関係
・収入
・資産
・キャリア
・時間
・環境
・精神面

上記の概念は、誰もが意識する・しないに関わらず、関係がある項目でもありますね。そのため、これらをあらかじめ考えておくことが、一度きりの人生を有意義に生き切るためには、とても大切であるのです。

そして、このようなことを考えている社員を育成することが、社員の人生をまっすぐ整えることにも繋がり、結果的に会社の発展に繋がっていくからです。

以上3点が、塗装屋で行ないたい3つの「社会人教育」です。

3.事務作業ができるように指導すること

塗装屋を成長させる「社員教育」の3点目は、事務作業ができるように指導することです。工事店では、以下の書類作成が必ず行なわれています。

・見積書
・現地調査報告書
・契約書
・原価管理シート
・完工一覧シート
・発注書
・作業指示書

これらの書類作成は、いずれも「正確さ」と「正しい言葉使い」が要求されますので、日頃から正確な事務作業能力を身に着けていくことを、心がけていくことも大切です。

塗装工事店の業界の根底では、中学卒・高校卒の方が多く、学生時代にあまり経験されなかった皆様が苦労をされながら仕事を通して習得をしておられる状況も多くの会社で見受けられます。

そのようなことからも、これらの「事務作業」も「社員教育」として行っていくことが求められていると理解いたしましょう。

4.社会人としての基礎的なビジネススキルを指導すること

塗装屋を成長させる「社員教育」の4点目は、社会人としての基礎的なビジネススキルを指導することです。私は多くの塗装屋経営を見てきて、以下の3点が特に、必要な基礎的ビジネススキルと考え指導をしてきました。

コミュニケーション

1点目は、コミュニケーションです。塗装屋で指導していかなければならないコミュニケーションには以下の4点があります。

◎バーバルコミュニケーション(言語を介したコミュニケーション)
ビジネスフィールドの中で具体的に行なわれる基本的なビジネス会話法を指しています。

◎ノンバーバルコミュニケーション(言語を伴わないコミュニケーション)
顔の表情や態度、声などを通して伝わるコミュニケーション法を指しています。

◎メール対応
外部業者に対するビジネスメール文章の書き方・社内での報連相に関わるビジネスメール文章の書き方についてを指しています。

◎電話対応
外部業者に対する電話コミュニケーションの仕方・社内での電話コミュニケーションの仕方についてを指しています。

◎報・連・相
業務上の報告・連絡・相談の仕方ですが、特に工事店は、お施主様から代表親方(責任者)に工事を委託し、その後、施工班へ作業指示を行うという流れになりますので、報連相が特に求められる業界とも言えます。

一見、社会では当たり前と思われやすいさまざまなコミュニケーションですが、多くの塗装屋さんでは関心が無い、もしくは指導をしていない状況なので、しなくてもよい損をしているケースも多々見受けられます。

一方で、これらのコミュニケーションの指導が出来ている塗装屋は、社外からの信頼度も高く、また社内での人間関係も良好となり、会社が発展をしていますので、ぜひ心がけてみてください。

段取り力

2点目は、段取り力です。塗装屋で指導しなければならない「段取り力」には、主に以下の3点があります。

・現場ごとの段取り
・1日の仕事の段取り
・1カ月の現場の段取り

「段取り力」を鍛えるためには、毎朝・毎夕確認作業を怠らないことです。地道な指導になりますが、努力は裏切りませんので、実行し続けることのみですね。

企画提案力

3点目は、企画提案力です。塗装屋で指導しなければならない「企画提案力」について、カンタンに説明します。
まず全ての工事は「コンサルティング企画提案」だと捉えます。

この前提に基づくと、営業担当者は「企画提案力」を磨く必要があると言えますよね。そこで「企画提案力」を理解する必要性が出てきますが、「企画提案力」とは以下の3つの要素から成り立っています。

・ヒアリングと調査診断力・・お客様のご要望や現地調査を行う力
・専門知識・・施工知識と建材知識を豊富に蓄積していること
・プレゼンテーション力・・いわゆる「営業力」

これらをバランスよく身に着けていくことで、お客様(お施主様・元請け様)の意向に沿った見積提案ができるようになります。言い換えると「企画提案力」が高まっていきます。その結果は、必ず会社の発展に繋がっていくはずです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?聞いてみれば「当たり前」と感じる点でも、なかなか実行出来ていないという塗装屋さんも多いかもしれません。

今後は塗装屋さんも「経営」に力を入れていなければいけない時代になってきましたので、ぜひ、1つ1つ実践をしてみてください。また、これらの社員教育は全て社長が行うことが理想です。

なぜなら、社長が社員教育を行うことにより、技術指導のみならず、仕事に対する姿勢や考え方も自然と伝わり、それが結果的に、理念ビジョン価値観マッチングな会社づくりにつながりますし、愛社精神を醸成することになるからです。

そして、このような「社員教育」を行っていることで、仕事ができる立派な社員が少しずつ入社してくれるようになるはずです。

ではまた次回